抄録
当科で経験した扁桃周囲膿瘍症例78例のうち,頸部への膿瘍進展をきたした19例の特徴について後方視的に検討した。単変量解析では,高齢,CRP高値,下極型またはCap型の膿瘍であった症例は有意に頸部膿瘍へ進展する割合が高かった。多変量解析では,65歳以上,Cap型の膿瘍で統計学的有意差を認めた。頸部膿瘍19例のうち上極型は8例,下極型は11例であったが,下極型の方がより広範囲に膿瘍進展する傾向にあり,縦隔膿瘍をきたした3例は全て下極Cap型であった。上極Cap型と下極型の扁桃周囲膿瘍は重篤化リスクが高いと考えられ,膿瘍腔の大きさに関わらず積極的に外科的ドレナージを検討するべきと考えられた。