頭頸部外科
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30 巻, 1 号
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教育セッション7
乳突削開術
  • 山本 裕
    2020 年 30 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    乳突削開術は耳科手術の最も基本的な手技だが,対象となる疾患,手術の目的は非常に多彩である。乳突腔の持つ解剖学的,生理的特徴を理解し,病態をよく把握して目的を明確化することが極めて重要となる。乳突削開では硬組織である骨を高回転のバーで削開することを強いられる。位置関係を失認すると重大な副損傷を引き起こす可能性が高い。乳突腔の周囲には顔面神経,半規管,耳小骨,中頭蓋窩,後頭蓋窩,S状静脈洞,頸静脈球が存在するが,これらの配置とそれぞれの位置関係を立体的に認識できるように習熟する必要がある。
シンポジウム3
甲状腺癌の治療戦略
  • 友田 智哲, 杉野 公則, 伊藤 公一
    2020 年 30 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    近年甲状腺癌に関する様々なガイドラインが改訂された。特に,国内のガイドラインで,転移や浸潤徴候のない微小乳頭癌患者に対して,非手術経過観察を希望される場合には,“経過観察を行うこと”が推奨された点は,他癌種の治療ストラテジーである早期発見,早期治療とは相反しており注目すべきである。この背景には,微小癌の増大頻度や遠隔転移の頻度は低いこと,増大後手術施行しても術後成績が変わらないことが前向き研究で示された為である。海外のガイドラインでは,次世代シーケンサーの普及に伴い,遺伝子検査が細胞診の鑑別困難時の診断補助として推奨されている。国内でも,髄様癌のRET遺伝子検査は,治療法決定に不可欠な検査である。
教育セミナー1
  • 讃岐 徹治
    2020 年 30 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    喉頭枠組み手術は,声帯に直接,手術侵襲を与えるのではなく,喉頭枠組軟骨の形態や位置を変えることにより,間接的に声帯の緊張や,長さ,位置を変え音声障害を改善させる外科手術であり,局所麻酔下で行うことで手術中音声をモニターしながら治療が可能という利点がある。  適応疾患で多いものは片側声帯麻痺である。術式として麻痺側声帯を正中移動させる甲状軟骨形成術1型と声帯を内転させる方法である披裂軟骨内転術,あるいは両者の併用が行われることが多い。  また内転型痙攣性発声障害の新たな外科治療として,チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型が保険収載された。  本稿ではそれぞれの手術を行う上でのコツを中心に解説する。
教育セミナー4
原著
  • 的場 拓磨, 名倉 しず香, 髙野 学, 小栗 恵介, 村嶋 明大, 岩城 翔, 村上 信五, 川北 大介
    2020 年 30 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    近年耳下腺腫瘍摘出術において,整容面で優れたFace-Lift approachが頻用されているが,適応には議論の余地がある。今回,名古屋市立大学病院で,Face-Lift approachを用いて耳下腺腫瘍摘出術を行った46例(FL群)と,従来のS字皮膚切開を用いた84例(Co群)で比較検討を行った。患者背景は,FL群では若年者・女性が多い傾向であった。臨床的因子として腫瘍径に有意差は認めなかったが,FL群では深葉腫瘍が少ない傾向であった。手術時間や出血量に有意差は認めなかった。また合併症の発生率に有意差は認めなかったが,FL群では唾液漏が多かった。Face-Lift approachによる耳下腺腫瘍摘出術は従来法と同等の手術を行うことができ,術後の整容面では高い満足度を得ることができた。
  • 千代延 和貴, 石永 一, 中村 哲, 竹内 万彦
    2020 年 30 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌は予後良好な疾患とされているが,予後不良な経過をたどる症例も少なからず存在し,腫瘍の被膜外浸潤は予後不良因子のひとつとして知られている。そこで,当科で初回治療を行った甲状腺乳頭癌症例187例のうち,Ex2と診断した29例について検討を行った。Ex2症例はEx0,1症例と比較して,無病生存率が有意に低下していた。また,Ex2症例の中でも,反回神経単独浸潤例には再発例はなかったが,反回神経以外の周囲臓器浸潤例は予後が劣っていた。しかし,甲状腺乳頭癌は比較的予後のよい疾患であり,担癌で長期生存が得られる例も存在するため,機能温存を目指しながら,適切な治療を行うことが重要であると考えられた。
  • 萬 顕, 大國 毅, 山本 圭佑, 高野 賢一, 黒瀬 誠, 氷見 徹夫
    2020 年 30 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    浸潤性副鼻腔真菌症は予後不良な疾患であるが,近年では病変の可及的な除去と適切な抗真菌薬の全身投与にて救命し得た報告が増えてきている。過去5年間に当科で経験した浸潤性副鼻腔真菌6症例を報告する。症例1は生検目的に開頭術を行い浸潤性副鼻腔真菌症の診断に至り,広汎頭蓋底手術および再建手術が行われた。他の5症例は副鼻腔病変が疑われ内視鏡下鼻内手術が施行された。2例は真菌の粘膜浸潤を認め病理学的に診断された。4例は画像上の骨破壊像や真菌の翼口蓋窩への進展を認めたため臨床的に診断された。5例生存,1例原病死の結果であった。内視鏡下鼻内手術による可及的な病巣除去とボリコナゾールの全身投与が有効であると思われた。
  • 松見 文晶, 三ッ井 瑞季, 室野 重之
    2020 年 30 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    われわれは,涙囊鼻腔吻合術鼻内法(En-DCR)において耳鼻咽喉科医でも容易に施行できる涙道外・経内眼角ライトガイド法(以下,本法とする)を考案し,眼科と合同で施行したEn-DCR初回例8名11側で,本法が必要な骨削除範囲を把握する上でのガイドとして有用かどうかを検証した。全側で本法のみで内総涙点を越える高さまで骨削除が達成できた。その後,本法を用いて耳鼻咽喉科単独で涙道ステントを留置しないEn-DCRを9名12側に施行し,解剖学的成功率は100%,機能的成功率は91.7%であった。本法により涙囊を広く開放できたことで,涙道ステント留置なしでも良好な結果が得られたと思われた。
  • 奥田 弘, 久保 富隆, 石原 宏政, 西堀 丈純, 久世 文也, 青木 光広
    2020 年 30 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    当科で経験した扁桃周囲膿瘍症例78例のうち,頸部への膿瘍進展をきたした19例の特徴について後方視的に検討した。単変量解析では,高齢,CRP高値,下極型またはCap型の膿瘍であった症例は有意に頸部膿瘍へ進展する割合が高かった。多変量解析では,65歳以上,Cap型の膿瘍で統計学的有意差を認めた。頸部膿瘍19例のうち上極型は8例,下極型は11例であったが,下極型の方がより広範囲に膿瘍進展する傾向にあり,縦隔膿瘍をきたした3例は全て下極Cap型であった。上極Cap型と下極型の扁桃周囲膿瘍は重篤化リスクが高いと考えられ,膿瘍腔の大きさに関わらず積極的に外科的ドレナージを検討するべきと考えられた。
症例
  • 宿村 莉沙, 實川 純人, 山㟢 徳和, 山下 恵司, 高野 賢一, 氷見 徹夫
    2020 年 30 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    腎癌術後に甲状腺転移をきたし,外科的摘出術を施行した2症例を経験したので若干の考察を加え報告する。  症例は,24年前に左腎癌で左腎摘出術を施行された71歳女性と,3年前に右腎癌で右腎摘出術を施行された69歳女性である。2症例とも右前頸部腫脹を主訴に受診され,甲状腺右葉の腫瘍を認めたため吸引細胞診検査を施行し,それぞれClassⅤ,ClassⅢという結果であり外科的摘出術を施行した。両症例ともに病理診断の結果は淡明細胞型腎細胞癌であり,腎癌の甲状腺転移と診断された。  腎癌の遠隔転移は,外科的切除で有意に生存率が延長されるとの報告があり,腎癌の既往がある甲状腺腫瘍に対しては転移の可能性も考慮し,手術適応を判断すべきである。
  • 松崎 尚寛, 井内 寛之, 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    2020 年 30 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    先天性側頸瘻は,胎生期における鰓性器官の発生異常に基づく先天奇形であり,胎生4週頃に出現する鰓溝と咽頭囊が交通遺残したものである。今回われわれは,完全側頸瘻の1例を経験したので報告する。症例は3歳男児,右頸部腫脹を主訴に当科受診した。画像検査(CT,MRI)で皮膚瘻孔部から瘻管の同定が可能で,胸鎖乳突筋前縁に沿って走行し,総頸動脈分岐部よりさらに上方に伸びて徐々に細くなっていた。全身麻酔下に瘻管摘出術を施行した。step ladder incision法に準じて皮膚を切開し,瘻管が細くなっている部分は4-0ナイロンをガイドに剥離した。瘻管は口蓋扁桃下極に開口していたため口蓋扁桃摘出術を行い,瘻管を完全摘出した。術後3年経過するが明らかな再発は認めていない。
  • 金城 秀俊, 安慶名 信也, 上里 迅, 真栄田 裕行, 鈴木 幹男
    2020 年 30 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    転移性甲状腺腫瘍は稀であり,特別な画像所見がないため術前に診断をつけることが難しい。われわれは腎細胞癌の甲状腺転移例を経験したので報告する。症例は55歳,女性。当科初診11年前に腎細胞癌により右腎摘出を受けた。受診9年前に膵頭部に再発し同部位を摘出された。受診3-4年前に右甲状腺腫大を認め増大傾向にあった。穿刺吸引細胞診で濾胞性腫瘍疑いの診断を受け,当科を受診した。甲状腺以外に頭頸部領域に腫瘍性病変を認めず,原発性甲状腺悪性腫瘍として葉峡切除術(右葉)+右気管傍郭清術を施行した。術後病理で腎細胞癌の転移と判明した。術後21か月で肺転移を認め追加治療中であるが,頭頸部には明らかな再発を認めていない。
  • 大上 研二, 戎本 浩史, 酒井 昭博, 槇 大輔, 飯島 宏章, 山内 麻由
    2020 年 30 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    咽頭・喉頭癌に対するTOVSは低侵襲手術として確立されつつある。頸部転移に対する取り扱いは施設間で差があるが,当科では頸部転移を有する症例に対して頸部郭清を同時に行っている。扁桃癌,舌根癌において,深部浸潤をともない舌根部筋層まで切除する場合,舌動脈の分枝である舌背動脈が術中,術後出血において問題となる。今回,中咽頭癌(p16陰性)T1N2bM0症例に対して,頸部郭清とTOVSを同時に施行した。先行の頸部郭清時に舌動脈を同定し結紮し,続くTOVSの過程で術創からの動脈性出血は明らかなものはなく,術後も出血なく経過良好であった。扁桃癌,舌根部癌における頸部動脈結紮の要否について考察する。
  • 吉澤 宏一, 新井 啓仁, 高畠 伶奈, 吉村 佳奈子, 光田 順一, 佐分利 純代, 橋本 慶子, 竹中 まり, 辻川 敬裕, 杉山 庸一 ...
    2020 年 30 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    早期下咽頭癌に対する喉頭機能温存治療として,(化学)放射線治療と喉頭温存手術(経口的切除術あるいは頸部外切開による部分切除術)が選択肢となり,その中でも経口的切除術は低侵襲治療であり術後嚥下障害の発生頻度は低いと報告されている。上咽頭癌放射線治療の既往のある早期下咽頭癌症例(79歳男性)に対し,経口切除術後に重度の嚥下障害が生じた。多数のリスク因子を有しており,リハビリテーション治療が奏功せず嚥下障害が遷延したため,嚥下機能改善手術を行い,経口摂取可能となった。病態に応じた適切な術式を選択することで経口切除後の嚥下障害に対して嚥下機能改善が可能となる。
  • 生駒 亮, 矢野 実裕子, 折舘 伸彦
    2020 年 30 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    含歯性囊胞はWHO分類では歯原性ならびに顎顔面骨腫瘍の中の歯原性発育性囊胞に分類され,上顎洞に発生することはまれである。今回われわれは,上顎洞含歯性囊胞に対してendoscopic modified medial maxillectomy (EMMM)を施行した症例を経験したので報告する。症例は21歳の女性で,主訴は左鼻閉,頰部腫脹である。CTで左上顎洞に歯牙を伴う囊胞性病変を認め,EMMMを施行して良好な視野のもと摘出術を施行した。術後,鼻腔形態は保たれて合併症を認めず,術後4年で再発を認めていない。上顎洞含歯性囊胞は,鼻内内視鏡操作に熟練する耳鼻咽喉科医が積極的に関与すべき疾患のひとつであると思われた。
  • 木村 有佐, 辻川 敬裕, 中村 高志, 山崎 祥子, 石井 祥代, 天谷 文昌, 新井 啓仁, 平野 滋
    2020 年 30 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌高度気管浸潤例においては,外科的治療の際に気管挿管や気管切開が困難で,全身麻酔導入への気道確保に難渋する症例も存在する。こうした症例に対しては,体外式膜型人工肺(Extra Corporeal Membrane Oxygenation,以下ECMO)を用いた気道確保が有効であり,近年使用例も増加している。今回われわれは気管浸潤を伴う甲状腺癌手術においてVA-ECMOを用いて気道確保した2例を経験した。ECMOの特長や導入時の留意点,穿刺血管の選択を含めた文献的考察を加えて報告する。適切な手技を選択することで,ECMOは高度な気道狭窄を伴う頭頸部癌手術の際の有用な気道確保の手段になり得る。
  • 新川 智佳子, 浅野 敬史, 天野 真太郎, 那須 隆
    2020 年 30 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    現在,様々な悪性腫瘍に対する分子標的薬の効果が報告され,生命予後が改善してきている。これにより,続発する重複癌に対する治療を要する症例もみられるようになった。今回,肺癌に対しゲフィチニブ(イレッサ®)を投与され,PRが得られていた症例に対し,甲状腺全摘術,頸部郭清術を施行した甲状腺乳頭癌症例を経験した。ゲフィチニブによる創傷治癒遅延の可能性も考えられたため,11日間の休薬期間を設けた。術後は創部の合併症を認めず,ゲフィチニブ休薬に伴う肺癌の増大を認めなかった。重複癌症例では,一次癌の治療継続の可否や,二次癌に対する治療の根治性や安全性などの問題があげられる。このような問題について,文献的考察を加え報告する。
  • 入谷 啓介, 古川 竜也, 手島 直則, 四宮 弘隆, 大月 直樹, 丹生 健一
    2020 年 30 巻 1 号 p. 105-112
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    頸動脈破裂は,頭頸部癌治療における致命的な合併症であり,その致命率は40%とされる。今回われわれは頭頸部癌治療に関連した頸動脈破裂を発症し,救命し得た4例を経験した。いずれも頭頸部癌再発例で,症例1は総頸動脈損傷による術中破裂,症例2は創部感染による総頸動脈の破裂,症例3は術後の創部感染の反復による2度の頸動脈破裂,症例4はニボルマブ投与で腫瘍が縮小し,頸動脈の体外露出に感染が加わったことによる頸動脈破裂である。治療法の選択にあたっては頸動脈破裂リスクを十分に考慮し,発症の際には症例ごとの病態に応じた止血・救命を迅速かつ的確に行えるよう普段からの蘇生訓練,他科との連携が重要であると考えられた。
  • 牧原 靖一郎, 内藤 智之, 津村 宗近, 假谷 伸, 岡野 光博, 西﨑 和則
    2020 年 30 巻 1 号 p. 113-118
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    本症例は18歳の男性で,鼻ほじりが原因と考えられる13mm大の鼻中隔穿孔を認め,Unilateral mucosal advancement flap techniqueを使用して穿孔閉鎖施行した。術後は穿孔が閉鎖し,自覚症状が消失した。Unilateral mucosal advancement flap techniqueは片側鼻腔で穿孔の下方と上方に二つのflapを作成し,そのflap同士を縫合することで穿孔を閉鎖する方法である。Flapは双茎で血流もよく,Interposition graftと組み合わせることで,1cmを超える中等度の大きさの鼻中隔穿孔の閉鎖に有効な方法と考えられた。
  • 津村 宗近, 牧原 靖一郎, 大村 和弘, 内藤 智之, 松本 淳也, 假谷 伸, 岡野 光博, 西﨑 和則
    2020 年 30 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    嗅神経芽細胞腫は,近年経鼻内視鏡下摘出術が導入されているが,腫瘍切除方法については,頭蓋底骨,硬膜,嗅球,嗅索と鼻腔内腫瘍を一塊切除するか,multi-layer resectionを施行するかに関して議論がある。本症例は70歳男性,硬膜浸潤を認めるKadsish分類Stage Cで眼窩内側壁に接する嗅神経芽細胞腫症例である。腫瘍近接のため経鼻的に篩骨動脈の確保が困難と考え,上眼瞼皮膚切開による内視鏡下経眼窩アプローチでの前,後篩骨動脈の凝固切断を施行し,経鼻内視鏡下に腫瘍を一塊切除施行した。副鼻腔内が腫瘍で充満しており,経鼻的に篩骨動脈へのアプローチが困難な場合に,有用であると考えられた。
  • 橋本 大, 藤原 肇, 茂木 千聡, 山下 俊彦
    2020 年 30 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー
    線維性骨異形成(fibrous dysplasia 以下FD)は,良性の骨増殖疾患で原因は不明である。長管骨や肋骨に好発するが頭頸部領域では比較的稀な疾患である。上顎骨,下顎骨にしばしば発生が認められるが,側頭骨FDの頻度は更に少ない。側頭骨FDは高頻度に外耳道の狭窄や真珠腫を発症し,治療は手術加療が唯一の方法である。しかし術後,外耳道の再狭窄を来すことがあり手術法や手術の時期についてのコンセンサスは得られていない。今回われわれは11歳で外耳道狭窄による伝音声難聴を来したため手術加療を行い,良好な経過が得られている症例を経験したので文献的考察を加え報告する。
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