抄録
先天性側頸瘻は,胎生期における鰓性器官の発生異常に基づく先天奇形であり,胎生4週頃に出現する鰓溝と咽頭囊が交通遺残したものである。今回われわれは,完全側頸瘻の1例を経験したので報告する。症例は3歳男児,右頸部腫脹を主訴に当科受診した。画像検査(CT,MRI)で皮膚瘻孔部から瘻管の同定が可能で,胸鎖乳突筋前縁に沿って走行し,総頸動脈分岐部よりさらに上方に伸びて徐々に細くなっていた。全身麻酔下に瘻管摘出術を施行した。step ladder incision法に準じて皮膚を切開し,瘻管が細くなっている部分は4-0ナイロンをガイドに剥離した。瘻管は口蓋扁桃下極に開口していたため口蓋扁桃摘出術を行い,瘻管を完全摘出した。術後3年経過するが明らかな再発は認めていない。