抄録
頭頸部扁平上皮癌の放射線治療における治療開始の遅延は予後に影響するとされる。治療待機期間を延長させる要因を明らかにするために,診療録を用いて後方視的に検討したので報告する。対象は2017年4月1日-2019年3月31日の期間に当科で治療を施行した49例とした。治療待機期間の中央値は38日だった。原発巣が下咽頭だと,中咽頭,喉頭よりも治療待機期間が長かった。初診診療科が耳鼻咽喉科だと治療待機期間が短くなる傾向を認めた。
下咽頭癌は発見,診断が遅れる傾向にあり,診察に注意を要する。一般市民への啓発活動などで,頭頸部癌を疑う症状を認める際は耳鼻咽喉科への受診を誘導する必要性があると考える。