2021 年 31 巻 1 号 p. 51-55
われわれはバセドウ病による精神症状の為,早急な手術を必要とした症例を経験したので報告する。
症例は37歳女性。2年前にバセドウ病と診断され投薬加療されたが,副作用の為自己中断した。2か月前に鬱病と診断され投薬加療されるも,精神症状は増悪した。バセドウ病の治療目的に当院受診。精神症状が強く医療保護入院が必要で,原因はバセドウ精神病と考えられた。早期の甲状腺機能の改善が必要だったが,副作用の為薬物療法が困難だった。その為無期ヨウ素で甲状腺機能を正常化後,速やかに甲状腺全摘術を施行し精神状態は安定した。バセドウ精神病では早期の外科的介入が必要な場合もあり,頭頸部外科医として病態の理解と対応が必要である。