下咽頭癌に対する根治治療から6 年後に発症し,大胸筋皮弁を用いた頸部手術で閉鎖できた気管食道瘻の1例を経験したので報告する。症例は59歳男性。下咽頭癌に対して化学放射線療法および咽喉頭全摘術・両側頸部郭清術・遊離空腸再建術を施行し,再発はなかったが,6年後に気管後壁から頸部食道に直径5mmの気管食道瘻を認めた。食道と気管を剥離し,食道欠損部を横縫合し,その上に筋体が食道側と気管側の間に介在するように大胸筋皮弁を置いて気管後壁を再建し,瘻孔を閉鎖した。本症例の気管食道瘻は主に化学放射線療法・根治手術後の血流障害に起因すると考えられ,その閉鎖には血流豊富な大胸筋皮弁が有用であった。