2021 年 31 巻 3 号 p. 287-292
外耳道癌は一塊に摘出できると予後が良く,腫瘍進展度に応じて定型的に術式選択されることが多い。一方,画一的な術式決定は余剰な副損傷を生じる問題がある。今回報告する左外耳道癌症例の進展度はT3であったが,腫瘍は外耳道内から一部上鼓室側壁方向に進展するのみであった。そのため外側側頭骨切除術に加え,ツチ骨頭より外側の上鼓室を一塊に摘出することにより根治切除が可能と判断した。術中切除境界をナビゲーションで確認しながら病変を一塊に摘出し,術後約4年間再発を認めていない。画像診断の進歩に伴い切除境界の検討が的確となり,ナビゲーションの併用で従来の画一的な術式によらない切除が実現し得るようになったと考えた。