抄録
甲状腺進行癌の手術では,気管,喉頭,食道,反回神経といった周囲臓器への浸潤が問題となる。ただ,甲状腺癌の多くを占める分化癌は悪性度が高くはなく,広範な切除安全域は必要ないため,気管軟骨や食道筋層の表層切除で対応可能な症例も多い。しかしながら,広範な浸潤例や高悪性度症例では拡大切除や再建術が必要となる。
反回神経合併切除後の高度嗄声の予防には,神経即時再建が有効である。神経移行術で同側の頸神経ワナを温存できない症例では,対側の神経を用いることもある。また腫瘍浸潤により反回神経末梢側の同定が難しい症例でも,輪状咽頭筋切開,甲状軟骨下角や側板切除によって神経断端を確認することが可能である。