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稲村 直哉, 吉村 理, 鈴木 章之
2023 年 33 巻 2 号 p.
155-161
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
目的:甲状腺癌における頸部郭清術後のリンパ漏増悪リスク因子について検証する。
対象:甲状腺乳頭癌に対し原発切除と同時に頸部郭清術を施行した50例。
結果:郭清側は右側18例,左側24例,両側8例。左右の郭清においてドレナージ持続期間は左側の方が有意に延長した。術後嘔気嘔吐が遷延した症例は左側においてドレナージ持続期間が有意に延長した。
結論:ドレナージ持続期間は左側において有意に延長しており,胸管が流入する静脈角を有する左側はリンパ流量が豊富であるためと考えられた。術後嘔気嘔吐とドレナージ持続期間の相関を認め,嘔気嘔吐対策によりリンパ漏が軽減する可能性が示唆された。
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—再発・転移頭頸部癌5症例の治療経験—
佐藤 文彦, 小野 剛治, 佐藤 公宣, 黒岩 大海, 栗田 卓, 末吉 慎太郎, 千年 俊一, 梅野 博仁
2023 年 33 巻 2 号 p.
163-168
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
近年,遠隔転移のある頭頸部癌においても原発巣の根治治療を行うことで予後を改善させるという報告がある。今回,PD-1阻害剤を投与した再発・転移頭頸部癌において,制御困難な局所領域病変に対して救済手術を施行した5症例を経験した。切除病変以外がCRであった4例はいずれも再発なく経過しており,PD-1阻害剤により遠隔転移巣が制御できれば,制御困難な局所領域病変に対する救済手術は治療として考慮される。一方で,切除病変以外にも残存する遠隔転移巣があった1例は,腫瘍増大と新規病変出現により術後9か月で死亡した。PD-1阻害剤投与後の救済手術の適応は慎重に検討する必要がある。
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池田 雅一, 菅野 千敬, 早川 貴司, 林 仁美, 室野 重之
2023 年 33 巻 2 号 p.
169-175
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
耳鼻咽喉科疾患患者は経口摂取が困難となり経腸栄養を要する場合がある。長期間経口摂取が不能で低栄養な状態となって患者は経腸栄養剤を開始する際にリフィーディング症候群などの栄養剤投与による合併症を考慮した対応を要する。経腸栄養プロトコルで統一した栄養療法を実践することで低栄養な患者への対応や栄養剤不耐症状の軽減などの栄養療法の向上が期待される。われわれは一般病棟で患者の病態に合わせた経腸栄養プロトコルの導入を行い,医師と看護師にアンケートを実施した。プロトコル導入によって低栄養な患者に配慮した栄養療法が実施されるようになり,不耐症状が出現したときに栄養剤投与速度減少が行われるようになった。
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三谷 壮平, 木谷 卓史, 勢井 洋史, 佐藤 恵里子, 坂本 佳代, 向川 卓志, 鵜久森 徹, 脇坂 浩之, 羽藤 直人
2023 年 33 巻 2 号 p.
177-183
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
頸部郭清術は頭頸部外科医の登竜門的術式であるが,立体解剖の理解が要求され,その習得は若手医師にとって容易とはいえない。今回,学習者のニーズに対応した頸部郭清術教材を開発することを目的とした。ニーズ調査の結果に基づき,頸部の3Dモデルや3DVR動画を含む新しい教材を開発した。開発した教材は,耳鼻咽喉科頭頸部外科医20名によるアンケートで評価され,3Dで立体解剖をイメージできる点や,動画で手術の流れが確認できる点,ステップ分けして知識が解説されている点で,従来の教材と比較して優れているとされた。この教材は,頸部郭清術を学習する若手耳鼻咽喉科頭頸部外科医の新たな教育ツールとして価値があると思われた。
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萩原 康平, 松木 崇, 星野 昭芳, 長尾 俊孝, 宮本 俊輔, 大原 卓哉, 吉田 功, 山下 拓
2023 年 33 巻 2 号 p.
185-190
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
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症例は10歳,男児。乳児期より右耳下部腫瘤を認めており,緩徐な増大を認めたため受診した。右耳下腺に無痛性で可動性良好な腫瘤を触知し,顔面麻痺は伴っていなかった。造影CTで右耳下腺に辺縁が造影される囊胞性腫瘤を認めた。細胞診では悪性所見を認めず,診断と治療を目的に耳下腺部分切除術を施行した。病理診断で
ETV6::RET融合遺伝子が検出され,分泌癌の診断に至った。切除断端は陰性であり,術後1年の経過で明らかな再発を認めていない。唾液腺分泌癌では
ETV6::NTRK3融合遺伝子が主にみられると報告されており,小児発症で
ETV6::RET融合遺伝子が検出された自験例は非常に稀であると考えられる。
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田原 寛明, 門田 伸也, 相原 栞, 森田 慎也, 青井 二郎
2023 年 33 巻 2 号 p.
191-196
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
RS3PE症候群は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の免疫関連有害事象(irAE)として報告されている。頭頸部癌のICIによるRS3PE症候群は報告例がなく, 留意すべきと考え報告する。症例は62歳,男性。中咽頭癌(p16陽性 cT3N1M0 Stage Ⅱ)に対する化学放射線療法後の肺転移に,Pembrolizumabによる治療を施行した。3コース投与後に両手足の浮腫・疼痛を認めた。抗核抗体・RF・抗CCP抗体は陰性であり,RS3PE症候群と診断した。ステロイド投与により症状は改善し,Pembrolizumabの投与継続が可能となり,肺転移を良好にコントロールすることができた。
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篠田 裕一朗, 寺田 友紀, 貴田 紘太, 中村 匡孝, 都築 建三
2023 年 33 巻 2 号 p.
197-204
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
症例は78歳男性。右軟口蓋原発p16陰性中咽頭癌cT2N1M0の診断に対して,頸部郭清術と顔面動脈の結紮処理を行った2週間後に経口的ロボット支援手術(TORS)を予定した。術前のPET-CTにて大腸癌を疑う所見を指摘され,中咽頭癌の治療後に精査を予定していた。しかし,頸部郭清術後に閉塞性イレウスをきたし,緊急で下部内視鏡検査を施行し,ステントを挿入した。大腸癌の治療も急ぐ必要があるため,TORSと同時にロボット支援低位前方切除術(Rob-LAR)を施行した。過去に中咽頭癌と大腸癌の重複癌に対して同時ロボット支援手術を施行した報告はなく,同時にロボット支援手術を行う利点と欠点を考察し,報告する。
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上田 哲平, 有友 宏, 篠森 裕介
2023 年 33 巻 2 号 p.
205-211
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
内視鏡下に腫瘍切除を行った上咽頭癌2例を経験したので報告する。症例1は62歳男性で,放射線治療後の後上壁型rT1の扁平上皮癌症例であり,内視鏡下に経口蓋法で腫瘍切除を行った。術後再発を認めなかったが,創傷治癒が遷延した。症例2は92歳女性で,右側壁型T1の腺癌症例であり,内視鏡下に経鼻腔法で腫瘍切除を行った。創部は遊離鼻中隔粘膜弁で被覆し,良好な創傷治癒を得た。現在術後18か月まで再発を認めていない。上咽頭癌において放射線抵抗性の組織型や放射線治療後の局所再発例に対する内視鏡下腫瘍切除は,良好な視野で低侵襲に切除することができるため,適切に症例を選択すれば有用な選択肢のひとつであると考えられた。
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松居 祐樹, 神山 亮介, 三谷 浩樹, 福島 啓文, 佐々木 徹, 新橋 渉, 瀬戸 陽, 市川 千恭, 鳥居 淳一, 檜原 浩介, 岩城 ...
2023 年 33 巻 2 号 p.
213-218
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
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下咽頭癌に対して下咽頭喉頭全摘・遊離空腸再建術後に,移植空腸の腸間膜リンパ節転移をきたした3例を経験したので報告する。症例1,2は頭側端に再発を認め,再発腫瘍切除術を施行した。その後に腸間膜リンパ節転移をきたし,同リンパ節の摘出を行った。症例3は腸間膜リンパ節転移に対して化学放射線療法を施行するも再増大をきたし,同リンパ節の摘出を行った。その後,空腸内腔に再発がみられたため同空腸を全切除し再度遊離空腸再建を行った。移植空腸の腸間膜リンパ節転移は稀である。摘出に際し,移植空腸の血流が途絶えると狭窄をきたすため,慎重な血管剥離操作と術後評価が求められる。
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伊藤 広明, 小森 正博, 宮内 敦史, 松本 宗一, 兵頭 政光
2023 年 33 巻 2 号 p.
219-225
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
免疫チェックポイント阻害薬投与後にまれな免疫関連有害事象である気管軟骨炎を発症し,治療に苦慮した症例を経験した。症例は66歳の男性,主訴は発熱,咳嗽,喀痰,全身倦怠感であった。右梨状陥凹癌に対する放射線化学療法と手術の後にリンパ節再発を認めた。救済治療としてニボルマブを54週,23クール投与後に本症を発症した。CRP上昇と気管気管支壁肥厚による内腔狭窄を認めた。高用量ステロイド治療にて一旦は改善したが,ステロイドを漸減すると再燃し,メトトレキサートを併用しても病勢は沈静化しなかった。マトリックスメタロプロテナーゼ3が上昇してきたためトシリズマブ,コルヒチンを追加し,寛解を得ることができた。
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合田 理希, 山下 燎亮, 山本 浩孝, 池上 聰, 大森 孝一
2023 年 33 巻 2 号 p.
227-232
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
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喉頭軟骨肉腫は喉頭悪性腫瘍の1%未満とまれな疾患である。今回われわれは輪状軟骨を原発とする軟骨肉腫に対し,喉頭全摘術を施行した症例を経験したので報告する。
症例は74歳男性で,労作時呼吸困難を主訴に受診し,喉頭内視鏡で声門下に隆起性病変を認め,CT・MRIで輪状軟骨を原発とする喉頭軟骨肉腫が疑われた。診断目的に直達喉頭鏡下で腫瘍減量術を施行したが,軟骨肉腫と軟骨腫の鑑別が困難であった。緩徐に腫瘍は増大したため,喉頭全摘術を施行した。病理組織結果は軟骨肉腫GradeⅡの診断であった。
喉頭軟骨肉腫は治療に際して根治性のみでなく機能温存についても考慮する必要があり,術式の選択について十分な検討が必要である。
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竹内 錬太朗, 赤松 摩紀, 渡部 佳弘, 北村 寛志, 上斗米 愛実, 岡 愛子, 金井 健吾, 岡野 光博, 野口 佳裕, 潮見 隆之, ...
2023 年 33 巻 2 号 p.
233-241
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
フリー
今回われわれは診断と治療に難渋した甲状腺原発扁平上皮癌症例を経験した。症例は76歳女性,主訴は嗄声と嚥下時違和感で,画像精査にて甲状腺右葉から上縦隔に進展する腫瘍を認め,細胞診で異型角化細胞を認めた。他に原発巣を認めず,甲状腺原発悪性腫瘍として根治的切除を予定したが,腫瘍の急速な増大のため断念し,切除生検のみ施行し最終的に甲状腺扁平上皮癌と診断した。薬物療法としてPF+ペムブロリズマブの投与を選択し一時的には症状緩和を得たが,最終的には逝去された。甲状腺癌の中でも扁平上皮癌は予後不良かつまれな組織型であり,未分化癌以外にも著しく進行の速い組織型があることを念頭に置いて診療にあたることが肝要である。
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山本 高也, 鈴木 健介, 森田 瑞樹, 川崎 博人, 阪上 智史, 八木 正夫, 野田 百合, 岩井 大
2023 年 33 巻 2 号 p.
243-248
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
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フリー
神経線維腫症1型(NF-1)は常染色体優性の遺伝性疾患であり,約3-5%に悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)を発症する。今回,われわれはNF-1に合併したMPNSTの1例を経験したので報告する。症例は26歳男性。右頸部腫脹を主訴に当科を受診し,カフェ・オ・レ斑と家族歴からNF-1に伴う神経線維腫を疑ったが,急速な増大と疼痛を認め摘出術を行った。永久病理でMPNSTと診断され,また神経断端に腫瘍が近接していたため術後放射線療法を施行した。MPNSTは局所再発や遠隔転移の頻度が高く予後不良の疾患である。切除には神経脱落症状のリスクを伴うが,本疾患においては早期診断と治療が重要であり積極的に手術を行う必要がある。
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森下 大樹, 荒井 康裕, 和田 昂, 中川 千尋, 折舘 伸彦
2023 年 33 巻 2 号 p.
249-255
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
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43歳女性。32歳からの伝音難聴で受診,耳硬化症と考えられ,右アブミ骨手術を施行した。10年後に施行した左アブミ骨手術中にガッシャーが出現した。CTで計測した蝸牛水管の内側開口部の径と面積はガッシャー側で6.1mm/21.7mm
2,非ガッシャー側で3.8mm/5.3mm
2と左蝸牛水管の拡大が考えられた。当科でアブミ骨手術を施行しガッシャーを認めなかった19症例23耳における内側開口部の径の最大値5.0mm,面積の最大値10.6mm
2であり,ガッシャー側の径と面積は非ガッシャー症例の最大値よりも大きい値であった。本症例では蝸牛水管の内側開口部の拡大がガッシャーの原因である可能性が示唆された。
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神村 盛一郎, 石谷 祐記, 石谷 圭佑, 戸村 美紀, 遠藤 亜紀, 金村 亮, 庄野 仁志, 近藤 英司, 東 貴弘, 佐藤 豪, 北村 ...
2023 年 33 巻 2 号 p.
257-261
発行日: 2023年
公開日: 2023/11/07
ジャーナル
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Thyroid-like low grade nasopharyngeal papillary adenocarcinoma(TL-LGNPPA)は上咽頭に発生する稀な低悪性度腫瘍である。甲状腺乳頭癌の組織像に類似し,TTF-1が陽性,Thyroglobulinは陰性を示す。われわれは,鼻中隔後端に発生したTL-LGNPPA例を経験した。症例は30歳女性で,鼻中隔後端の腫瘤を偶然発見された。術前診断は外反性乳頭腫であり,摘出術を行った。術後の病理検査でTL-LGNPPAと診断した。断端は陰性であり追加治療は行わなかった。術後1年以上経過したが再発や転移は認めていない。
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