2024 年 33 巻 3 号 p. 311-317
甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,乳頭癌高リスク症例に全摘術を行うことが推奨されているが,中リスク症例は症例ごとの判断となっており,術式選択に難渋することがある。今回われわれは,2012年7月~2022年7月に名古屋市立大学病院で施行した甲状腺乳頭癌全摘症例72例に対して臨床的検討を行った。高リスク症例が最も多く,中リスク症例では外側区域リンパ節転移がある症例が多かった。高リスク症例では無増悪生存率が不良であり,中リスク症例であっても,外側区域リンパ節転移のある症例では再発・転移リスクが高いことから,合併症の予防に努めつつ全摘術を考慮すべきと考えられる。