2001 年 11 巻 3 号 p. 123-128
1986年9月から2000年8月までの14年間に当科で慢性甲状腺炎20例の手術を行った。悪性腫瘍の合併を疑って手術を施行した症例が15例あり,うち細胞診でclass III であった症例が6例あった。半葉切除以下の切除が17例に,亜全摘以上の切除が3例に行われた。全摘を行った2例は甲状腺の腫大が顕著で,気道・食道の症状を呈していた。慢性甲状腺炎での細胞診では,腫瘍性病変がなくともclass IIIと判定される場合があり,その解釈はより慎重であるべきである。慢性甲状腺炎の存在をより確実に診断するために,甲状腺関連自己抗体のうち,少なくとも抗Tg抗体の測定が求められる。