抄録
内耳道腫瘍には聴神経腫瘍,顔面神経鞘腫,髄膜腫,脂肪腫,血管腫などがある。難聴や耳鳴,めまいなどで発症し,やがては小脳橋角部腫瘍になる。診断にはMRIが最も有用であるが確実に鑑別することは困難である。手術には経迷路法と経中頭蓋窩法があり,前者は迷路を破壊するため聴力保存はできないが,後者は聴力保存も可能である。一般的には術前の聴力がPTA≦50dB,SDS≧50%の症例では経中頭蓋窩法が,それ以下では経迷路法が適応となる。近年,聴力や顔面神経の術中モニタリングが可能となり,内耳道内に限局する症例のQOLは飛躍的に向上している。腫瘍を早期に発見し,聴力や顔面神経の機能を保存して腫瘍を摘出することが内耳道腫瘍に対する耳鼻咽喉科医の使命である。