頭頸部外科
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12 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 藤井 正人
    2002 年12 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     現在まで頭頸部癌の化学療法はCDDPと5-FUの併用療法が第一選択とされているが,腎毒性軽減を目指してカルボプラチンやネダプラチンが開発され外来化学療法等への有用性が期待される。ドセタキセル(TXT)も頭頸部癌に有効でCDDPと5-FUとの3剤併用では高いCR率が報告され注目されている。現在のevidenceとして,放射線療法に化学療法を同時併用した場合の有用性と,根治治療後の補助化学療法が遠隔転移抑制に有効であることなどが示されている。さらにneoadjuvant chemotherapy(NAC)が奏効した場合の予後が良好であることがevidenceとして証明されつつあるが今後はCDDP+5-FU+TXTの様な奏効率の高いレジメンによりNACの再評価が必要であろう。欧米では大規模比較臨床試験によって頭頸部癌治療のevidenceが検討されている。我が国でもNACや化学療法併用放射線療法に関する比較臨床試験を行い機能温存治療や予後改善に対する治療法を検討する必要がある。
  • ―聴器腫瘍―
    伊藤 真人, 伊東 祐永, 古川 仭
    2002 年12 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     聴器腫瘍手術における境界領域は,外側頭蓋底手術(Lateral Skull Base Surgery)であるが,この部に進展した聴器悪性腫瘍症例においては手術の成功率はまだまだ低いのが現状である。一方で,聴器良性腫瘍では腫瘍がかなり広範に頭蓋底に進展している場合でも,外側頭蓋底手術によって機能をも温存したうえで外科的治療が可能な症例も多い。 今回我々が過去3年間に経験した中耳外耳の聴器腫瘍症例13例(良性腫瘍6例,悪性腫瘍7例)のうち,脳神経外科と共同で頭蓋底外科手術を行なった対照的な2症例(外耳道扁平上皮癌症例,および側頭骨巨細胞腫症例)について検討し,あわせて聴器良性腫瘍,悪性腫瘍それぞれについて治療の考え方についても考察する。
  • ―内耳道腫瘍―
    村上 信五, 渡邊 暢浩
    2002 年12 巻1 号 p. 15-19
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     内耳道腫瘍には聴神経腫瘍,顔面神経鞘腫,髄膜腫,脂肪腫,血管腫などがある。難聴や耳鳴,めまいなどで発症し,やがては小脳橋角部腫瘍になる。診断にはMRIが最も有用であるが確実に鑑別することは困難である。手術には経迷路法と経中頭蓋窩法があり,前者は迷路を破壊するため聴力保存はできないが,後者は聴力保存も可能である。一般的には術前の聴力がPTA≦50dB,SDS≧50%の症例では経中頭蓋窩法が,それ以下では経迷路法が適応となる。近年,聴力や顔面神経の術中モニタリングが可能となり,内耳道内に限局する症例のQOLは飛躍的に向上している。腫瘍を早期に発見し,聴力や顔面神経の機能を保存して腫瘍を摘出することが内耳道腫瘍に対する耳鼻咽喉科医の使命である。
  • 吉原 俊雄
    2002 年12 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     副咽頭間隙腫瘍はまれな腫瘍であるが,その大半は耳下腺由来の腫瘍と神経原性腫瘍が占める。手術法としては口内法,頸部外切開法(経耳下腺法,経顎下部法),さらに下顎骨の切除を伴う方法,口内法と頸部外切開法の併用,経側頭下窩法に大別される。良性腫瘍は頸部外切開法によって摘出可能な例が多いが,視野が悪く摘出困難な症例では口内法を併用し咽頭側の剥離を行ったり,皮膚切開を延長し下顎骨の処理を追加する必要がある。症例の実際を呈示し,さらに手術法に関する文献的検討も加えた。
  • ―手術法と転帰―
    佐々木 富男
    2002 年12 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頸静脈孔部腫瘍48症例の経験に基づいて,臨床上の特徴,手術法,下位脳神経機能を中心とした手術成績と転帰について報告した。手術はtransjugul arapproachを基本としたが,腫瘍の進展状況に応じて他のアプローチを併用した。手術死亡例はないが,転移性腫瘍3例,ユーイング肉腫1例,形質細胞腫1例はいずれも術後3~15ケ月以内に腫瘍再発で死亡した。頸静脈孔神経鞘腫25例の下位脳神経機能の転帰;舌下神経麻痺は腫瘍摘出によって4/7で改善がみとめられたが,9,10,11th.nに関しては改善例はなく,それぞれ28%,24%,12%に悪化が認められた。初発症状で最も高頻度に認められた難聴は,12/14で不変,2/14で悪化した。
  • 内田 淳, 佐久間 貴章, 松本 学, 渡辺 尚彦, 調所 廣之
    2002 年12 巻1 号 p. 33-37
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     Fibrous Dysplasiaには思春期早発症を始め様々な内分泌機能異常を合併することが知られている。今回,13歳の女性で顔面骨広範に進展したFibrous Dysplasiaに成長ホルモン高値を合併した症例を報告する。症例は腫瘤減量術を施行し,その後に成長ホルモン高値に対してCB-154(グロモクリプチン)投与した。成長ホルモン値は正常化し,術後約1年経過して局所再発は認められない。
  • 西尾 健志, 西村 一, 安田 繁伸, 福島 龍之, 最上 朗
    2002 年12 巻1 号 p. 39-43
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     下咽頭癌では進行例が多く,根治的切除のため咽喉頭摘出術が必要となるが,比較的限局する腫瘍では下咽頭部分切除術が選択可能である。今回,下咽頭部分切除および遊離皮弁による再建術後に生じた皮弁壊死に対し,Hinge flapを用いた二次的再建術により嚥下・発声機能を温存しえた一例を経験した。症例は51歳男性,右梨状陥凹に腫瘍を認め,下咽頭部分切除術,両頸部郭清術および前腕皮弁による再建術を施行した。術後,皮弁壊死を生じたため皮弁除去術を行った。再建は二期的なものとし,咽頭皮膚瘻形成後,Hinge flapによる再建を施行した。術後,嚥下・発声機能は温存され,本術式は感染制御・機能温存に有効であった。
  • 伊藤 卓, 木村 百合香, 石川 紀彦, 岸本 誠司, 大野 喜久郎, 飯田 秀夫
    2002 年12 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2002/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     幼児期に急速増大し,著明な眼球偏位を認め,鼻腔から篩骨洞,前頭蓋底へと広汎に進展した鼻副鼻腔内過誤腫の一例を報告する。症例は2歳男児,主訴は左鼻翼~頬部腫脹,鼻出血,鼻閉,左眼球偏位であった。MRI上,病変は左鼻腔から篩骨洞・前頭蓋底にかけて広範囲に進展し,眼球を前側方へ圧排するように眼窩内を大きく占拠していた。CTでは一部石灰化陰影も見られた。病理組織学的検査にて鼻腔軟骨中皮性過誤腫と診断された。治療は冠状切開による前頭開頭,Hemi-Facial dismasking法,Caldwell-Luc法を組み合わせて腫瘍摘出を行い,ほぼ全摘することができた。免疫組織学的検査・電子顕微鏡検査での悪性所見は認められず,術後1年を経過して複視・眼球運動障害もない。
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