抄録
下咽頭癌では進行例が多く,根治的切除のため咽喉頭摘出術が必要となるが,比較的限局する腫瘍では下咽頭部分切除術が選択可能である。今回,下咽頭部分切除および遊離皮弁による再建術後に生じた皮弁壊死に対し,Hinge flapを用いた二次的再建術により嚥下・発声機能を温存しえた一例を経験した。症例は51歳男性,右梨状陥凹に腫瘍を認め,下咽頭部分切除術,両頸部郭清術および前腕皮弁による再建術を施行した。術後,皮弁壊死を生じたため皮弁除去術を行った。再建は二期的なものとし,咽頭皮膚瘻形成後,Hinge flapによる再建を施行した。術後,嚥下・発声機能は温存され,本術式は感染制御・機能温存に有効であった。