抄録
前頭洞病変に対するアプローチは,鼻外手術から前方斜視鏡下の鼻内手術へと変遷してきた。しかし元来鼻前頭管は,前頭蓋底や眼窩壁など解剖学的危険部位に囲まれており,前頭洞を鼻腔へと開放できる範囲には制限がある。このため術後に鼻前頭管が再閉塞する症例も少なくない。鼻前頭管が骨性に閉鎖した再発性前頭洞炎や,眼窩上または前頭蓋底にそって存在する前頭洞嚢胞は,特に治療に難渋する事が多い。通常のESSで十分に対応できなければ,前頭洞底の骨削開や,鼻外手術とESSの併用などが必要となる。鼻前頭管へのシリコンチューブの留置も有効であるが,抜去後の再閉鎖予防は今後の課題である。