抄録
中咽頭後壁扁平上皮癌は頻度も少なく,他の亜部位例に比べ予後不良である。1973年から2005年までに久留米大学耳鼻咽喉科で治療を行った中咽頭後壁扁平上皮癌一次治療例のうち根治治療を行なった25例(男性23例,女性2例)について検討した。年齢は44~81歳(平均67歳)で,T分類はT1:3例,T2:12例,T3:8例,T4:2例で,N分類はN0:11例,N1:5例,N2:7例,N3:2例であった。
Stage別にはStageI:3例,StageII:6例,StageIII:6例,StageIV:10例であった。原発巣の治療は手術主体が18例,放射線のみ2例,化学放射線療法5例であり,手術例のうち5例に再建手術を行なった。再建臓器は空腸が4例,前腕皮弁が1例であった。全体の死因特異的5年累積生存率は43%,5年局所制御率は48%であった。25例のうち10例が生存し,15例が死亡していた。死因は原発巣死7例,リンパ節死1例,遠隔転移死2例,合併症死2例,他病死3例であり,原発巣制御が重要である。QOLを考慮すると咽頭側切開で後壁を広範に切除した症例や切除範囲が咽頭後壁2/3以上の症例では重度の誤嚥が生じるため喉頭温存は難しく,進行した後壁型では喉頭全摘出術を基準術式とした拡大切除が必要と思われる。