2007 年 17 巻 2 号 p. 157-160
比較的稀な耳下腺結核の症例を報告した。症例は65歳の女性で,主訴は左耳前部腫瘤であった。軽度の圧痛を認める以外は皮膚の発赤や,顔面神経麻痺は認めなかった。術前の画像診断では耳下腺腫瘍が疑われ,超音波断層下での穿刺吸引細胞診ではClass IIであった。穿刺後皮膚の発赤を認めたため,悪性腫瘍も疑い耳下腺部分切除および発赤皮膚の合併切除を施行した。病理診断にて耳下腺結核と診断された。近年結核は再興感染症として注目されており,耳下腺結核ではその臨床症状から悪性腫瘍との鑑別が困難な場合もあり,頭頸部領域でも常に考慮すべき疾患の一つと考えた。