抄録
人工内耳手術の標準的な手術手技は,乳突削開・後鼓室開放術後に蝸牛開窓を行う方法(顔面神経窩アプローチ)である。今回我々は,S状静脈洞の前方突出により後鼓室開放が不可能な症例に対して,人工内耳手術を施行した。本症例では,通常乳突削開を行う部位より上方から骨削開を行い,上鼓室を直接開放させた。キヌタ骨短脚が部分的に欠損していたため,この空間を経由して人工内耳電極(Nucleus24)を上鼓室から中鼓室内へ導入し,さらに蝸牛内へ電極を挿入した。蝸牛開窓は,経外耳道的に行った。電極はダミー電極を含め,全電極を蝸牛内に挿入することができた。