頭頸部外科
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ESSの合併症と安全な手術
森山 寛
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1995 年 5 巻 2 号 p. 71-73

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抄録

 誤った鉗子操作により紙様板(眼窩内側壁)を穿破し,眼窩脂肪織を引き出すトラブルは少なくない。軽度であれば眼周囲の皮下出血ですむが,血管を損傷すると眼窩内出血をきたす。眼窩内出血が高度になると眼球突出や視野の障害を来たすことがある。さらに眼筋を損傷すれば眼球運動障害を惹起する。また篩骨洞天蓋壁および硬膜の損傷により髄液漏を来たすこともある。これらの副損傷は術中出血の高度な例に多い。出血により術野を確認できないまま鉗子操作をすすめるなど,盲目的操作がいかに危険であるかが理解される。したがって安全な内視鏡下の鼻内手術を行うに際して重要な点は,1.明視下の操作2.臨床解剖の熟知,3.出血のコントロールすなわち十分な麻酔と血圧のコントロール,4.鉗子の正しい選択と使用法,5.副損傷に対する適切で素早い対処,などである。

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© 日本頭頸部外科学会
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