園芸学会雑誌
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原著論文(和文)
トマト水耕栽培の無機成分の日施用法における施用量が収量,品質および無機成分吸収量に及ぼす影響
中野 有加渡辺 慎一川嶋 浩樹高市 益行
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2006 年 75 巻 5 号 p. 421-429

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抄録

慣行の培養液管理法である濃度管理法に対して,環境負荷の低減のため提唱されている日施用法について,無機成分施用量と生育および果実収量との関係を明らかにすることを目的に試験を行った.トマト‘ルネッサンス’を湛液水耕で冬季および夏季に栽培し,日施用法における収量,品質および無機成分吸収量を濃度管理法(対照区)と比較した.日施用法では,トマトの吸水量を指標とし,3 段階の異なる施用量で全成分を供給した(日施用少量区,日施用中量区,日施用多量区).その結果,日施用中量区では,S 以外の施用量が対照区の53~66%(冬季)および73~77%(夏季)に削減された.日施用少量区と日施用中量区では,定植 1ヶ月以降に培養液中の N 濃度は10 mg·L−1 以下,P 濃度は 3 mg·L−1 以下で推移した.日施用各区では,施用量が多いほど多量要素の吸収量および茎葉の成長量が大きかった.果実収量は,両時期ともに日施用各区で対照区と同等であった.果実の酸度には処理による差は認められなかったが,冬季の糖度および両時期のアスコルビン酸含量は,対照区よりも日施用区で高かった.適正な窒素施用量は,吸水量が 1 日当たり0.5 L/株程度の生育初期では50 mg/株,その後吸水量の増加に応じて増量し,最大130 mg/株と考えられた.以上の結果,日施用法は,トマトの過剰な栄養成長を防ぐことにより,果実生産効率を向上させることができ,排液による環境負荷を低減できると考えられた.

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