園芸学会雑誌
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原著論文
ニホンナシとマルメロの花序発達の比較
江角 智也田尾 龍太郎米森 敬三
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2007 年 76 巻 3 号 p. 210-216

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抄録
ニホンナシ‘豊水’では,開花時に,ひとつの花芽からおよそ 8 個の花と 1 から 2 枚の葉が基部から順に展開・開花する.マルメロではひとつの花芽から 8 枚の葉と 1 個の花が展開・開花する.これらの花序形成の差異を明確にするために,ニホンナシおよびマルメロの花芽形成時における花序の発達を走査型電子顕微鏡によって観察して比較した.ニホンナシ‘豊水’では,6 月下旬に茎頂部が肥大して,苞葉を形成しながら花序分裂組織が盛り上がると同時に,苞葉の葉腋に側花の原基が形成された.この時点で側花の原基数は 4 から 5 個であるが,花序分裂組織の先端が頂花の原基に分化し,さらに未分化であった外側の苞葉の腋生分裂組織が側花の原基に分化することで,最終的におよそ 8 個の花原基からなる花序が花芽中に形成された.マルメロの花芽分化は 10 月の下旬から 11 月に開始することが観察された.それまでにおよそ 8 枚の葉原基が形成されていたが,この時点でそれらの葉腋には腋芽は観察されなかった.茎頂部全体が大きく肥大すると同時に 5 つのがく片の原基が順次分化し,1 個の花原基が形成された.これらの観察結果から,ニホンナシとマルメロの花序の差異は,葉あるいは苞葉の原基の腋生分裂組織が花原基に分化するか否かによってもたらされると考えられた.
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© 2007 園芸学会
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