園芸学会雑誌
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原著論文
異なる着花誘導条件がオリーブ (Olea europanea) 葉の遊離ポリアミン含有量の変化に及ぼす影響
Malik Nasir S. A.Bradford Joe M.
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2007 年 76 巻 3 号 p. 205-209

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抄録

様々な環境条件下での植物の応答や発育過程の制御にポリアミンが関与していることが知られている.オリーブではポリアミン含有量の季節変化や温度条件のポリアミン含有量への影響に関しては報告されているものの,栄養成長から生殖成長のような発育相の変化の過程にポリアミンがどのように関わっているのかはほとんど分かっていない.本研究では,着花誘導を行わない場合と低温処理などにより着花誘導を行って栄養成長から生殖成長に移行させた場合のオリーブ葉の遊離ポリアミン(プトレシン,スペルミジン,スペルミン)含有量の比較を行った.プトレシンとスペルミンは対照区である栄養成長を行っているオリーブの葉に比べて,低温処理により着花誘導を行った葉においては非常に高い含有量を示した.しかし,このようなポリアミンの増加は低温処理せずに着花誘導を行った樹では認められなかったことから,オリーブ葉での遊離型ポリアミン含有量の増加は発育相の変化によるものではなく,温度の影響によって引き起こされたものだと考えられた.このように遊離ポリアミン含有量はオリーブの生殖成長への相転換とは対応していないことが明らかとなった.一方,腋芽の遊離ポリアミン含有量は花芽へと発達するにともない増加したが,開花に至って減少した.花芽と比べて未熟果および成熟果におけるポリアミン含有量は少なかった.

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© 2007 園芸学会
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