Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
リンゴ台木における根頭がん腫病抵抗性の評価と遺伝
森谷 茂樹岩波 宏高橋 佐栄古藤田 信博須崎 浩一阿部 和幸
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2008 年 77 巻 3 号 p. 236-241

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抄録

根頭がん腫病抵抗性のリンゴ台木を探索しその遺伝様式を検討するために,リンゴ台木品種として‘JM5’,‘JM7’,‘M. 9’,‘M. 27’,‘G. 65’,Malus prunifolia‘Mo 84a’,‘盛岡セイシ’の 7 品種と,Malus 属野生種として M. sieboldii‘Mo-15’,‘サナシ 63’の 2 品種およびそれらの交雑実生 147 個体を供試し,Agrobacterium tumefaciens の 2 菌株 Peach CG8331(biovar 2)と ARAT-001(biovar 1)を接種源とする接種試験を行った.M. sieboldii‘サナシ 63’と‘Mo-15’は Peach CG8331 株の接種に対して接種 6 か月後でもがん腫を形成しなかった.その他のリンゴ台木は接種部位にがん腫を形成し,形成率は 0.31 から 0.82 の範囲であった.ARAT-001 株の接種に対して M. sieboldii‘Mo-15’はまったくがん腫を形成せず,M. sieboldii‘サナシ 63’のがん腫形成率は 0.19 と低かった.ARAT-001 株の接種に対して‘G. 65’のがん腫形成率は Peach CG8331 株を接種したときよりも低かったが,他の台木では Peach CG8331 株を接種したときと同程度か,より高かった.この結果はがん腫形成率について A. tumefaciens 菌株とリンゴ台木品種間に相互作用(特異性)があることを示唆する.これらの結果より,本研究で供試したリンゴ台木において M. sieboldii‘サナシ 63’と‘Mo-15’が病原性の A. tumefaciens に対して最も抵抗性の程度が高いと考えられた.交雑実生を用いた接種試験においてがん腫を全く形成しない個体は‘JM7’ × ‘サナシ 63’の組み合わせでは Peach CG8331 株と ARAT-001 株の接種に対してそれぞれ 19 個体(16%)と 5 個体(4%)であった.同様に‘JM5’ × ‘G. 65’の組み合わせではいずれの菌株の接種に対してもがん腫を全く形成しない個体はなかった.これは M. sieboldii‘サナシ 63’の根頭がん腫病抵抗性がその後代に遺伝することを示す.

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© 2008 園芸学会
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