Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
γ-アミノ酪酸(GABA)高含有トマト品種の選抜
斎藤 岳士松倉 千昭杉山 将紀綿引 暁子大島 泉飯島 陽子小西 千秋藤井 崇稲井 秀二福田 直也西村 繁夫江面 浩
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2008 年 77 巻 3 号 p. 242-250

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抄録

γ-アミノ酪酸(GABA)は,4 つの炭素からなる非タンパク質アミノ酸であり,原核生物,真核生物に広く存在している.近年,人体において血圧上昇抑制効果等の様々な保健機能を有することが明らかにされていることから,食品・製薬業界における天然素材由来の GABA の需要が高まっている.高 GABA 含有トマト品種の育種母本選抜のため,本研究において,2005 年,2006 年の 2 年間にわたり 61 の在来栽培品種,野生種および野生派生系統における果実 GABA 含量を評価したところ,供試品種間で大きな差が認められ試験年度間における再現性も低かった.また,塩ストレスによる GABA 蓄積促進効果を評価するため,選抜した高 GABA 含有候補品種を用いて,NFT システムによる塩ストレス栽培試験を行った.各 2 回の品種間比較試験,塩ストレス栽培試験の結果,作型,作期によらず安定して高 GABA 蓄積形質を示した‘DG03-9’を GABA 高含有品種として選抜した.さらに,塩ストレス条件下における‘DG03-9’ならびに‘ハウス桃太郎’の GABA,グルタミン,グルタミン酸およびアスパラギン酸の蓄積を果実発達過程を追って調査した.その結果,GABA は果実発達前期に蓄積され,‘DG03-9’では開花後 24 日目,‘ハウス桃太郎’では同 36 日目に最大値を示し,後期には減少した.果実発達前期における GABA 蓄積には塩ストレスによる促進効果が確認されたが,果実発達後期における GABA 減少へのストレス処理の影響については品種間で差がみられた.また,対照区および塩ストレス処理区いずれの条件下においても,赤熟果における‘DG03-9’の GABA 含有量は‘ハウス桃太郎’よりも高かったにもかかわらず,開花後 24 日目および 36 日目に各々現れた最大 GABA 含有量は同程度であった.以上の結果より,‘DG03-9’における GABA 高蓄積形質は果実成熟過程における GABA 減少率の抑制に起因していることが示唆された.本研究で選抜された‘DG03-9’は新しい GABA 高含有品種育成の母本として有望である.本研究ではトマト果実の GABA 含量測定に GABase による酵素化学的定量法を用いた.本法は GABA 高含有品種の育種を進める上で,有用な測定法になると考えられる.

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© 2008 園芸学会
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