抄録
H2O2 の葉面処理によって,キュウリおよびトマト幼植物の葉における温度耐性と抗酸化酵素の活性向上が引き起こされた.H2O2 の葉面処理による温度耐性の誘導は,熱ストレスにさらされた幼植物に比較して,電解質漏出と MDA 含量の減少,可溶性タンパク質とクロロフィル含量の増加することによって検出された.熱ストレスにさらされる前の H2O2 処理によって,熱ストレスにさらされた幼植物の葉における H2O2 とスーパーオキシドアニオンのレベルも減少した.キュウリおよびトマト幼植物の葉における APX と G6PDH の比活性は,H2O2 の葉面処理によって有意に増加した.SOD,HPX,PPO アイソザイムの活性染色によると,H2O2 の葉面処理によって急に増加し,その後 10 日間維持された.キュウリ幼植物の葉において,GPX 活性染色の結果は,H2O2 の葉面処理によって有意に増加したが,トマトの葉では起こらなかった.トマト葉における SOD,HPX,PPO の一つか二つのアイソザイムは,H2O2 の葉面処理によって抑制されたが,抗酸化酵素全体では増加した.これらの結果は,作物が熱ストレスにさらされる前の H2O2 の葉面処理は,熱ストレスを軽減する効果的な方法である可能性を示唆している.