Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ネギの初期生育に関するQTL解析
小原 隆由塚崎 光Song Yeon-Sang若生 忠幸山下 謙一郎小島 昭夫
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 78 巻 4 号 p. 436-442

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抄録
セル成型苗を用いたネギの機械移植技術が普及しつつあるが,育苗期間が限られ極めて小さい幼苗を移植するセル育苗では活着が不安定になりやすい.このため旺盛な初期生育を示す品種の開発が期待されている.本研究では,ネギの初期生育に関する量的遺伝子座(QTL)を見出し,その遺伝子作用を明らかにするため,苗生体重について QTL 解析を行った.材料には千住群と九条群に由来する 2 つの自殖系統を交雑した両側戻し交配集団(BC1)を用いた.これまでに構築した amplified fragment length polymorphism(AFLP)主体の地図を基に新たに共優性 SSR マーカーを追加し,対応する 2 つの連鎖地図を作成した.苗生体重の評価は BC1S1 家系を用い,3 年にわたり 3 回実施した.F1 および多数の BC1S1 家系の苗生体重の平均値には顕著なヘテロシスが観察された.複合区間マッピング法により多くの QTL が両側の地図上に検出されたが,個々の QTL が表現型に及ぼす寄与率は 25%以下とそれほど高くなかった.これらのうち 3 つの連鎖群に属する 3QTL は,異なる環境下でも効果の安定した QTL と考えられた.一例を除き全ての QTL は片側の地図のみで検出され,もう一方の地図の対応する位置には検出されなかったが,両側地図の分析結果を用いて各座の優性度を推定した.いくつかの座においては超優性の遺伝子作用が観察された.その他の座は相加および優性効果を示した.本解析集団における苗生体重の顕著なヘテロシスは,優性および超優性の遺伝子作用の集積に基づくと考えられた.
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© 2009 園芸学会
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