Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ロックウール栽培における無機成分の量管理法がトマトの成長および収量に及ぼす影響
中野 有加佐々木 英和中野 明正鈴木 克己高市 益行
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2010 年 79 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

ロックウール栽培における無機成分の量管理法が,トマトの生育および果実収量に及ぼす影響を濃度管理法と比較した.量管理法では,基準に基づき 3 段階(1.0 倍区,1.25 倍区,1.5 倍区)の異なる施用量で全成分を 1 日に 1 回供給した.施用基準は,湛液水耕において開発した,トマトの 3 日間の吸水量を用いて求めるものである.閉鎖循環式の量管理法を,2 段階に EC を設定したかけ流し式の濃度管理法(高 EC 区,低 EC 区)と比較した.その結果,量管理 1.0 倍区では,無機成分の施用量が対照区の低 EC 区の 30~37%に削減された.量管理 1.0 倍区では,定植後 2 か月以降に培地内培養液中の N,P,K の濃度は低 EC 区よりも低く推移した.1.0 倍区では,低 EC 区に対して,葉乾物重が 27%小さく,果実収量は 23%多かった.しかし,1.0 倍区で上位葉の成長量および窒素含有率が少なく,果実の糖度がやや低かったことは,栽培後期の施用量が不足していたことを示唆している.一方,1.25 倍区および 1.5 倍区の無機成分施用量は低 EC 区よりも少ないものの,過剰な無機成分が栽培後半に培地に蓄積し,塩類濃度を上昇させた.1.0 倍区において培地内の EC および無機成分濃度が長期間にわたって安定していたことから,3 日ごとの施用量の調節頻度は十分短いと考えられる.湛液水耕において開発された量管理法の基準は,栽培期間の長いロックウール栽培に適用できるが,栽培後期における適正範囲は基準の 1.0~1.25 倍と推定される.

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© 2010 園芸学会
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