Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
鉢花カーネーションの品質と可溶性炭水化物含量に及ぼす光強度,小花数および水ストレスの影響
山根 健治猪爪 亜希中島 有香和田 義春八巻 良和林 万喜子清水 明
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2010 年 79 巻 3 号 p. 301-307

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抄録

鉢花カーネーションの収穫後品質向上のため室内での開花と可溶性炭水化物の変化について調査した.20℃,PPFD 15 μmol・m−2・s−1 連続光下における‘アンネマリー’の日持ちは約 12 日であった.株全体の乾物重と全可溶性炭水化物含量(TSC)は室内搬入 6 日後まで低下し,14 日後にやや増加した.グルコース,フルクトースおよびスクロース含量は 6 日後まで著しく低下し,14 日後にわずかに低下した.一方,茎葉部に主に含まれるピニトールは 10 日後までほぼ一定で,14 日後に増加する傾向が認められた.30 日間の弱光により葉のグルコース,フルクトースおよびスクロース含量は微量となったが,ピニトールは有意に変化せず,TSC の 79%を占めた.次に,温室において鉢土の水分を低く保つ水ストレス処理(0.2 m3/m3)を 14 日間行ったところ,対照区(0.4 m3/m3)に比べて葉の水ポテンシャルが有意に低下し,ピニトール,グルコースおよび TSC 濃度が増加した.しかし,水ストレスによる効果は室内搬入とかん水により消失し,結果的に鉢花の品質に有益な効果は認められなかった.摘花により鉢花当りの小花数を 20 個とし,12 時間日長の PPFD 15 μmol・m−2・s−1 に置いたとき,50 花および 80 花の場合と比較してクロロフィル蛍光の Fv/Fm 値(光合成系 II の最大収率)は有意に高く,開花が促進された.3 日に 1 度,周期的に 150 μmol・m−2・s−1 の強光を当てたとき,Fv/Fm および開花数が有意に増加した.20 日後の小花の TSC 濃度は強光区で高く,ピニトール濃度は弱光区で有意に高まった.これらのことから,摘花と定期的な強光が鉢花の可溶性炭水化物の欠乏を緩和し,品質を改善することが示唆された.カーネーションのピニトール含量とストレスとの関係について考察した.

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© 2010 園芸学会
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