Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ユリ切り花では花弁の彩度が花の外観上の老化に影響を与える
望月 寛子岸本 早苗和田 有史増田 知尋市村 一雄
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2012 年 81 巻 4 号 p. 350-356

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抄録
ユリ切り花の花持ちは落弁よりも先に花弁の退色によって限界を迎える.しかしながら,花弁の色の変化は連続的に生じるため,いつ花持ちが終了したのかを決定することは難しい.我々は花弁の黄色いユリ切り花の花持ち期間において人間が判断する観賞価値の低下(外観上の花の老化)と花弁色との関連を検証した.さらに外観上の花の老化と生理的な花弁の老化の時間的関連性を明らかにするため,花弁の乾物重と厚さを測定した.外観上の花の老化は花弁色の鮮やかさ(彩度)に対応した.彩度値はカロテノイド含量の減少にともなって開葯 4 日目から低下を始めた.外観上の花の老化は 6 日目に顕著となり,観賞価値は急速に失われて花持ちは終了した.一方で生理的な花弁の老化の兆候は開葯 1 日目から認められ,花弁の乾物重と厚さは徐々に減少を始めた.生理的な花弁の老化は色相角度の変化に反映された.色相角度は色調を表している.我々の結果は黄色いユリ花弁の彩度値が外観上の花の老化を反映し,花持ちに影響することを示唆している.外観上の花の老化は花弁の生理的な老化に比べて 3 日遅い.この原因として,花弁カロテノイド含量が開花初期に十分量保たれていたことが寄与していたと考えられる.
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© 2012 園芸学会
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