Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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総説
ウメおよびモモの芽の休眠および萌芽制御機構に関する最近の研究
山根 久代
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2014 年 83 巻 3 号 p. 187-202

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抄録
落葉果樹は秋季に芽を発達させ落葉して越冬する.芽の休眠は,温帯域での四季の変化に適応した形質であり,冬季の凍害や霜害の回避,春の一斉萌芽を可能とする.芽の休眠は,翌年の果実生産や新梢成長に影響を与えるため,重要な農業形質のひとつである.近年の気候変動により,休眠覚醒の攪乱が危惧されており,休眠覚醒制御機構および萌芽制御機構の解明は重要な課題である.本総説では,ウメとモモの葉芽の休眠に関する研究を概説するため,最初に,休眠深度の季節的変動に影響を与える環境要因について述べた.そして,遺伝学的,生化学的,分子生物学的アプローチによる休眠制御機構に関する研究結果について紹介した.最近著しい進歩を遂げているゲノム解析のアプローチにより,休眠制御機構に関与する遺伝子や遺伝子ネットワークについて新たな知見が得られてきている.それら休眠制御遺伝子候補のひとつである DORMANCY-ASSOCIATED MADS-box(DAM)遺伝子に関する知見について詳しく説明した.発現解析や形質転換実験による機能解析からは,ウメやモモの DAM 遺伝子が成長抑制因子として休眠導入過程だけではなく,葉芽の休眠覚醒や萌芽制御に関与していることが示唆されてきている.芽の休眠は多くの遺伝子ネットワークが関与する量的形質である.現在進められている多くの研究により,サクラ属果樹を含む多くの温帯落葉果樹において,芽の休眠の分子機構に関する知見が蓄積されてきている.今後,得られた知見が応用研究の発展に活かされることが期待される.
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© 2014 by Japanese Society for Horticultural Science
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