園芸学会雑誌
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柿葉の氣孔に就て
渥美 樟雄
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1940 年 11 巻 4 号 p. 402-413

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抄録

1. 氣孔に關する研究は多いが本邦主要果樹の一なる柿に就いては未だ殆んど行はれて居らぬやうである。故に之を材料として調査研究を行つた。茲に示したのは昭和14年1ケ年の成績である。
2. 材料として富有, 調査項目として氣孔數, 氣孔指數, 氣孔の大さ, 氣孔の成熟状態等に就いて行つた。
3. 1枚の葉の異る部位に於ける氣孔の状態は氣孔數も氣孔指數も共に葉の中央部一帶に高い數字を示し, それに次いでは基部で, 先端及周邊は遙かに低くなつて居る。氣孔の大さについては明瞭てはないが大體氣孔の密度に相反する傾向がある。
4. 枝條上の下端, 中間, 上端に着生せる葉に就いて行つた結果によると正常な發育をしたものにては下端の葉は氣孔數, 氣孔指數共に常に非常に低く,中間部と先端部の葉を比べると一般に先端の方が高い。氣孔の大さに就ては明瞭なる傾向は認められない。
5. 氣孔の形成は非常に不齊であることが察せられる。展開直後の嫩葉に於て既に全く成熟した氣孔が認められ, その後漸次に増加して行く。終りに比較的一齊に成熟して, その葉の氣孔は完成するやうである。
6. 時期を異にして枝條上の各葉について見るに氣孔の成熟は始め頃は比較的緩かに行はれるが後に追々早く進行し6月上旬を以つて完了する。
7. 柿葉の氣孔については今後も引續き研究する豫定であるが以上の豫備的調査により, 試料の採取は強健なる枝條の先端近くに着ける健全葉を選び, 之を縱斷せる一半の中央部より取るを適當となす根據を得たやうに思ふ。時期は7月以後とする。

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