園芸学会雑誌
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大根の雜種強勢と其利用に關する研究(第2報)
秋山 大介矢澤 大二山川 憲二
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1940 年 11 巻 4 号 p. 414-428

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抄録

1. 著者等は昭和14年三重縣立農事試驗場に於て大根の雜種強勢竝其利用に關し試驗を行ひ次の結果を得た。
2. 一代雜種15組, 二重雜種7組及之れ等の親品種11の比較試驗に於て雜種は何れも極めて顯著なる雜種強勢を現し一代雜種にては其兩親に比し14~75%平均39%, 標準宮重に比し18~41%平均30%の増收を示し, 又二重雜種では其兩親たる一代雜種に比較すれば著しくないが, 標準宮重に比すれば23%~42%, 平均31%の増收を得た。
3. 而して實用的見地より有望と認めたる組合せは前年度も成績良好なりしF1御薗×練馬の外, F1堀江×練馬, F1宮重×練馬であつた。尚美濃早生を一方の親とした組合せは總じて收量著しく増すも鬆入りを招き易き傾向がある。
4. 上記試驗の結果に鑑み二重雜種に依つて一層高度の雜種強勢を期待する事は困難と考へられる尚大根に於て株間の組採種に依りし場合品種間は勿論二重雜種の例に於てすら其第一代が顯著なる uniformity を示す事實は今後の究明に俟つ可き興味ある問題である。
5. 次に母本交互混植に依る兩品種間の交雜率を確める爲め花粉用として滿洲紅丸, 採種用として御薗を用ひ次代幼植物の胚軸色に依り調査せる結果, 交雜率は個體に依つて異り40~90%, 平均76%であつた。從つて本法を應用する事に依り凡70%程度の交雜F1種子の採種は比較的容易に行はれるものと推考される。
6. 尚幼植物時代に於けるF1の雜種強勢を檢せんとして本年度は特に半精密試驗の要領に依り一代雜種5種, 兩親品種6種に就き7日毎の生體重を調査せる結果, その雜種強勢は當初明確でないが發芽後凡3週間を經れば漸次明かとなり4へ5週間にして相當顯著になる。
7. 從つて前記の自然交雜種子を利用せんとすれば, 間引の前半期即ち發芽後凡2週間は專ら環境の均等齊一ならん事を心掛け, 間引の後半期即ち發芽後3~5週間に至れば雜種強勢の發現と外部形態的の特性が漸次明瞭化する時期であるから此機を外さず一段と注意して間引を行へばF1以外の混在個體は其大部分を淘汰し得るであらう。
8. 更に前法を實際に應用せんとするに當つては出來る丈其 uniformity を高める爲め相當純度高き系統を育成し置き隨時供用すべきものと考へる。

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