抄録
二三種の藥劑を撒布した場合の梨長十郎の葉の同化作用に及ぼす影響に就て實驗した。測定は打拔法により葉から一定面積の試料をとりその乾物重の増加を求める方法によつた。
1. 機械油乳劑を撒布した場合, 同化量は撒布翌日には急減し, 後次第に囘復する。濃硫酸で充分精製した油の場合は囘復は數日でほゞ完全に近かつたが, 未精製のCマシン油の場合は5日後も殆んど囘復を示さず, 桃では落葉を惹起した。
精製油の同化作用に及ぼす影響は乳劑の濃度の高い程著しいが, 又油の粘度も高い程影響は大きい。葉の日中に於ける含水量の減少は油を撒布した區は少く, 且粘度の高い油の方が影響が大きい。
2. 石灰ボルドー液は撒布翌日少石灰, 過石灰共に影響を認めず, 數日後少石灰撒布區に葉害の現はれた後も差が認められなかつた。
3. 石灰硫黄合劑は撒布翌日は同化量の著しい低減を惹起すが, 數日後の測定では可なりの程度に囘復を示してゐた。