園芸学会雑誌
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柿の生理的落果に關する研究
I 自然落果調査 主としてその波相に就て
梶浦 實
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1941 年 12 巻 3 号 p. 159-178

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抄録

1. 柿生理的落果研究の第一歩として昭和9年•10年の2ケ年間富有•甲州百目•衣紋•鬼平•横野の6品種 (外に天神御所を短期間調査) について自然落果調査を行つた。又富有に於ては場所を異にするもの, 着花状體を異にするものをも供試した。
2. 落果は7月下旬~8月上旬を境として前後に分けることが出來る。又富有柿ではそれ以後には殆ど落果は起らない。この時期以前の落果は大體一般果樹に起るものと同時期のもので, これを他の果樹と同じく早季落果と呼び, 以後のものを後季落果と云ふことゝする。この後季落果は苹果の收穫前の落果とも時期を異にし, 柿特有のものと思はれる。
3. 早季落果は謝花後間もなく起り, 花滿開後約3週間前後に通常最も多く顯著な波を作り, 其後6月下旬~7月上旬, 或は7月下旬に波を作る2個乃至3個の波を有する波相を基本型とする如く, 各種の條件によつて第2或は第3の波は非常に小さいか或は殆どなくなる等種々變化するのではないかと考へられる。
本調査では波の數は1~3個で一定して居ない。
4. 無核果は有核果より甚落ち易く, 且早い時期に落ちる。唯供試品種中では横野が相當數の無核果が止つた。有核果内では種子數1~2個のものが特にそれ以上のものと比較して落ち易い樣である。
5. 後季落果は降雨と相當密接な關係がある樣に見えるが早季落果中は確定的のことは云ひ難い。
6. 以上の結果から見てこの種調査の結果だけからは確實な結論は得難く, 實驗が必要である。
第2報以下落果の原因と考へられる各種要素に就き各個に行つた實驗結果の綜合的考察によつて結論を得たいと思ふ。

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