園芸学会雑誌
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傾斜地に於ける柑橘「温州」の根群に就て
木村 光雄
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1941 年 12 巻 3 号 p. 179-193

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抄録

以上實驗の結果を摘要すると次の如くである。
1. 傾斜地に於ける柑橘温州の樹齡30年生のもので, 枳殼砧と柚砧とに就て地上部, 地下部の生體重量を測定し, 併せてT-R率を求めた。
2. 根群の水平的分布を知る爲に, 主幹より1m, 2m, 3m, 4m, 及び5mと同心圓を劃し, 垂直的分布を知る爲に, 地表より30cm, 60cm, 90cm, 及び120cmを劃し, 更に之を主幹を中心として傾斜の上下に兩分し計40區を設けて各區別に根群を採集し調査した。
3. 根群の分類は0.5cm以下を細根, 0.5~1.0cmを中根, 1.0~2.0cmを大根, 2.0cm以上を特大根とし, 主幹の接着部以下の地下にある根部と認むべきものを根幹として計5種に分類した。
4. 根群の總生體重量は枳殼砧54瓩強, 柚砧41瓩弱で, 枳殼砧は其内細根26%弱, 根幹22%弱で細根, 根幹が主きをなし, 柚砧は其内特大根31%弱, 細根24%強で, 特大根,細根が主きをなしてゐる。
5. 主幹を中心とし傾斜の上下に根部生體重量を兩分して見ると, 枳殼砧は上半部に41%強, 下半部に59%弱が分布して下半部に多く, 柚砧は上半部に71%弱, 下半部に29%強が分布して居り斷然上半部に多い。
6. 水平的分布を見るに主幹より1m圏内に枳殼砧は全根重の58%強, 柚砧は48%強が夫々分布して居り, 主幹を去る3m圏内に兩者共實に98%強が存在して居る。
7. 垂直的分布を見るに0~30cm内に枳殼砧は全根重の96%弱, 柚砧は73%強が分布して居り, 30~60cm間には枳殼砧は4%弱, 柚砧は25%弱が分布して居り, 60cm以下は兩者共殆んど根群の分布は無視して好い程度である。
8. 細根の密度は枳殼砧では主幹より2m圏内の0~30cm間及び2~3m間の0~30cmの下半部に高く, 柚砧では2m圏内の0~30cm及び1~2m間の30~60cmの上半部に高い數値を示めした。
9. 地上部總生重量は枳殼砧84瓩弱, 柚砧62瓩強で枳殼砧は柚砧の1.34倍に相當し地下部は1.33倍に相當してゐて, 兩者の地上部及び地下部の割合は大體平衡を保つてゐる。主幹は地上部總生體重量の枳殼砧22%弱, 柚砧19%弱であり, 全葉量は枳殼砧23%弱, 柚砧19%強を示してゐる。
10. 生體重量に依るT-R率は枳殼砧は1.45, 柚砧は1.52である。地上部重量より全葉量を控除してT-R率を求めると枳殼砧1.19, 柚砧1.21となる。

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