園芸学会雑誌
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果實, 塊莖, 根部の發育とビタミンC濃度との關係に就て
菅原 友太
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1943 年 14 巻 4 号 p. 286-293

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抄録

1. 本實驗は苺•蕃茄•蕃椒•蠶豆•碗豆•馬鈴薯•大根等を圃場又は植木鉢栽培をなし, 一定期間毎に其等の蔬菜の栽培目的たる部分を夫々採集してビタミンCの測定を行ひ,果實•塊莖•根部の發育とビタミンC濃度の變化に就て調べた。
2. 果實中のビタミンC濃度は果實の發育經過と共に或る程度迄上昇し遂に最高に達し以後減少を示す。 而して減少の程度及び時期は蔬菜の種類, 品種及び器官の相違其他種々の事情により異る。 斯る傾向は還元型ビタミンCに於て最も著しい。
3. 苺•蕃茄等の果實に於ては適熟期か或は適熟期の以前にビタミンC濃度は最高に達するも, 蠶豆•碗豆等に於ては單位生體重當りのビタミンC含有率が發育の早期に最大となり其後減少を示した。 而してビタミンC濃度が最高に達した以後に於ても莢•種子の發育は極めて旺盛であるから發育とビタミンC濃度とは必ずしも一致しない。
4. 馬鈴薯塊莖のビタミンC濃度は其の發育に伴つて増加を示し本實驗の範圍内では發育後期に於ける減少は認められない。 又廿日大根•時無大根等の根部でも發育と共にビタミンC含有率は増したが或る程度發育した後にはビタミンC濃度は減少した。
5. 苺•蕃茄•蕃椒等に就き開花後黒紙の袋で果實を覆ひ遮光の下に發育せしめ, 其のビタミンCを測定したのに無覆即ち對照區の-ものに比し可成りの減少が認められた。 此等の事實より考察すると果實中のビタミンCの大部分は葉部の如き同化器官より移送されるものであるが, 少くとも其の一部分は果實自體に於て光合成に關聯して生成されるものと思はれる。

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