園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
生鮮農産食品の貯藏に關する研究 (第4報)
葱頭の貯藏に關する研究 葱頭鱗莖の大小と貯藏性並に貯藏期間中に於ける代謝作用
緒方 邦安
著者情報
ジャーナル フリー

1952 年 21 巻 1 号 p. 29-36

詳細
抄録

本研究は昭和24年6月より昭和26年2月にわたり葱頭貯藏の基礎的研究の一つとして葱頭鱗莖の大小と貯藏性並びに貯藏期間中に於ける葱頭の代謝作用等について, 泉州黄葱頭を試料として實驗を行つたものである。
本實驗成績を要約すれば次の如くとなる。
(1) 葱頭鱗莖の大小と貯藏性との間には, 特定の場合を除いては何らの關係を認める事は出來ない。但し, 鱗莖の大いさが同一であつても, 収穫期の早晩によつて貯藏力は異なる。
(2) 鱗莖の大小と呼吸作用, カタラーゼ作用力及びその含有成分等の如き生理的特性の上には, 殆んどその差を認め難く, 大小如何に拘らず略々同一である。この事は鱗莖の大小と貯藏力に差異なき事と符合して居る。
(3) 葱頭鱗莖の底盤除去貯藏法は, 或る程度發芽を防止し得ても, 呼吸量著しく増加し病原菌が附着し易く, 貯藏力著しく減退する故適當でない。
(4) 貯藏期間中に於ける呼吸作用の變化よりみて, 温暖地帶に於ける葱頭の貯藏期を休眠期, 休眠覺醒期, 休眠終了萌芽期の3期に大別して考える事が出來る。
(5) 貯藏中に於けるカタラーゼ作用力の消長は呼吸作用と略々同樣の傾向を示すが, いずれもその消長には常に若干の「ズレ」がある。
(6) 貯藏中に於ける含有成分の變化状態としては, 水分, 全酸, pH價に於ては大なる變化は認められない。全糖含有率は貯藏日數の經過と共に次第に減少するが, 休眠覺醒に伴う呼吸作用の上昇と共に萌芽期にかけて僅かに上昇する。而して還元糖と非還元糖との間には可逆的の變化がみられる。
(7) 葱頭の發芽に際しては, 發芽の伸長に伴つて呼吸作用は増大する。而して鱗莖に於る糖分は減耗する。一方カタラーゼ作用力は發芽に伴い一時減少する。
(8) 冷温貯藏は呼吸作用も抑制し且つカタラーゼ作用力を減退せしむ。從つてその全糖分も長期に亙り相當高率に保有せられる。40°Cの高温下にあつては, 休眠期中と雖も生活機能の支障をきたし腐敗を招來する。

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top