1. 桃果吸收昆蟲として當場に於ては夜蛾科15種が判明した。それらの發生量, 時期は年による變動が大きいが, アケビコノハ, アカエグリバ, ヒメエグリバが吸收昆蟲の大半を占め, その他の種の發生は問題とするに足りない。
發生始めは7月下旬より8月上旬で, 8月20日前後より最盛期に達し, 晩桃收穫期迄その状態を維持する。尚, 發生消長を青色螢光誘蛾灯誘殺數で知ろうとしたが, アケビコノハが誘殺されない爲に, この方法を當場では採用出來ない。然しアカエグリバ, ヒメエグリバに對しては適用し得る。
2. 夜間の活動状態を見るに日沒後2時間迄に漸次増加最盛期に達し, 爾後日出2時間前迄その状態で吸收加害し, それより急激に減少して日出時には全て園を飛去る。
3. 防除試驗として次の各方法を檢討してみた。
(イ) 青色螢光誘蛾灯はアケビコノハに對しては効果は期待出來ないが, その他のものでは, 桃果への來襲を約半數に止めることが出來る。然しこの程度では被害を實用的に防止することは不可能と考えられる。
(ロ) 燻煙法は平均2.5割程度に飛來蟲數を減少させ防除の目的を達成することは出來るようであるが, 實施上の不便の爲實用化にはなお障碍がある。
(ハ) 忌避劑を地上或は樹上撒布したが, BHC水和, 粉劑, DDT粉劑共に無効で, 只ピレトリンを低乾中油に溶解したものを地上撒布すれば, 飛來蟲數に於て半減被害果率に於て約35%に止め, BHCを石油に溶解したものも飛來蟲數を半滅している。主劑としてBHC, 溶劑として低乾中油を使用するのが目下の所効果あるように思われたが, 今後の研究に俟つ所が多い。
(ニ) 忌避劑塗布袋掛ではBHC塗布のものならば, 普通時期に1度袋掛したのみで被害果率を45.73% (標準94.12%) に止めることが出來たが, その臭氣が果肉に滲透する爲使用不可能である。DDT塗布袋は普通時期に袋掛したのでは効果少く, 本蟲最盛期直前8月中旬頃それ迄の新聞紙袋と掛替えねば有効でない。この際は44.12%に被害果を止めることが出來たが, これも諸經費の點より稍々不滿な防除法である。
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