抄録
(1) 伊那地方の赤石山系山麓地帯, 及び木曾山系の天龍岸寄りの一部に, 野生桃の生育地があり, 何れも群落状に生育している。
(2) 生育地は標高700~1000米の, 人里離れた高地で, 礫の多い傾斜地である。
(3) 全部有毛, 白肉桃で, 大部分が離核又は半離核であるが, 稀に粘核のものもある。
(4) 果形は一定していないが, 一般に小果で種子も亦小さいものが多いが, 果形, 核の大さ等から凡そ4系統に大別出來る。
(5) 小果であり, 肉質も不良で生食用としての價値は極めて低い。
(6) 熟期は早生桃が6月中~下旬, 中生桃9月下~10月上旬, 晩熟桃10月中~11月上旬頃である。
(7) 花は一般に大形で, 桃色のものが多いが, 中には極淡い桃色 (白色に近い), 濃紅色のものもある。
(8) 砧木的價値については, 系統別に現在, 調査中である。