園芸学会雑誌
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砂耕による蔬菜の耐塩性に関する研究 (第2報)
葉菜類について
大沢 孝也
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1961 年 30 巻 1 号 p. 48-56

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抄録
本報は1957~1960年にわたつておこなつた主要蔬菜の耐塩性に関する一連の砂耕試験のうち,葉菜7種類,すなわちカンラン,ホウレンソウ,ハクサイ,セルリー,タマネギ,レタス,ミツバに関して得た結果をまとめたものである。実験方法は第1報で述べたと同様であつて,上記葉菜につき各1品種を供試してガラス室内で砂耕栽培し,HOAGLAND氏液を基本培養液(標準区)として,これにNaClを1000, 2000, 4000, 8000, 16000ppmの各濃度に加えたNaCl処理区を設けた。
1.処理濃度が高くなるにつれてホウレンソウ,タマネギ,レタス,ミツバでは生育が阻害されて植物体は矮化し,生葉数,収量が減じたが,カンラン,ハクサイセルリーでは比較的低濃度区では生育に悪影響がなく,1000ないし2000ppm区ではかえつて生育,収量が標準区をしのぐ場合があつた。なおハクサイ レタスは16000ppm区,ミツバは4000ppm区以上で全株が枯死した。地上部新鮮重の半減をきたす大約の処理濃度は,高い方から順に,カンラン9000,ホウレンソウ8000,ハクサイ8000,セルリー6000,タマネギ2500,レタス2000,ミツバ1000ppmであつた。
カンランの結球開始は高濃度区ほどやや遅れ,とくに8000, 16000ppm両区は結球不完全で,結球部収量(新鮮重)の半減濃度は約6500ppmであつた。タマネギの球部の肥大開始および葉部の倒伏の時期は,いちじるしく生育不良の16000ppm区を除いて他の区間では差がなく,結球部収量(新鮮重)の半減濃度は約2500ppmであつた。
地上部の乾物率は高濃度区でやや高くなるものがあつた。
2.塩害の特殊症状は次のようであつた。カンランは処理開始後一時的に,2000ppm区以上で処理濃度に比例して葉の表面がwaxyとなつた。ホウレンソウは,16000ppm区がいちじるしく生育不良で全体的にひどく黄化した。ハクサイは8000ppm区以上で葉が濃青緑色を呈し,16000ppm区は全株が枯死した。またNaCl区全般において葉縁が表側に巻き込む症状が見られた。タマネギはNaCl区全般において,処理濃度に比例して外葉の先端から枯れ込み,とくに16000ppm区の葉部は完全に枯れ込んだ。レタスは4000, 8000ppm両区は濃緑色を呈したが,16000ppm区は全体的に黄化して全株が枯死した。セルリー,ミツバは何らの特殊症状も現わさなかつたが,後者は4000ppm区以上で全株が枯死した。
3.処理濃度の増大にともなつて,葉中のNaおよびClの集積はほとんどの疏菜でほぼ直線的に増加したが,耐塩性の強い蔬菜は弱い蔬菜よりもNa集積が大きい傾向があつた。ミツバ以外ではNaの集積はClとほぼ同等かあるいはより大であつた。葉中のK, Ca, Mg含量は一般にNaと拮抗的に減少したが,拮抗の様相はionや蔬菜の種類によつてまちまちであり,またこれら4種cationの総量は多くの蔬菜では漸増した。葉中N含量は,カンラン以外ではNaCl区で減少する傾向があり,とくにホウレンソウでは高濃度区でいちじるしく減少した。葉中P含量は蔬菜によつて増減の傾向が異なる。しかしN, Pの含量変化はcationにおけるほどいちじるしくない。炭水化物含量も蔬菜によつて変化の傾向を異にした。
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