園芸学会雑誌
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30 巻, 1 号
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  • 暗期の影響の研究
    斎藤 隆
    1961 年30 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.苗令と短日感応度 子葉のみの時期には,暗期を与えても雌花は分化しない。本葉1枚展開時には暗期4回にはなお反応しないが,6回繰り返すと反応を始め,本葉2枚展開時には4回繰り返しに反応するという風に,苗令が進むにつれて暗期に感応しやすくなる。
    2.暗期の長さと回数 暗期の長さは18時間が最適で,処理回数は最少3回必要である。限界暗期は処理回数と関連して変り,回数が多いほど短かい暗期でよくなるが,もつとも短かくても9回処理まででは8時間である。暗期が20時間を越すとかえつて雌花は減り,24時間では全然発現しない。暗期処理回数の多いほど雌花の発現は多くなる。
    3.暗期中における弱い光の影響 16時間暗期処理中2, 16, 32および160f.c.の光を照射すると,160f.c.では雌花の発現がまつたく抑えられるが,32f.c.以下ではある程度雌花を発現し,光の弱いほど発現数は多くなる。
    4.暗期中断の影響 暗期処理中,1時間電燈照明すると,中断しない場合よりは雌花の発現は減るが,中断前後の暗期はある程度補足的に作用する。
    5.明期の光の強さと波長の影響 暗期処理中の明期の光の強さを変えると,光の強さが弱くなるにつれて雌花発現数は減り,80f.c.以下では雌花は,発現しなくなる。また光の色を変化させてみると,赤色光は影響がないが青および近赤外光は雌花の発現を抑制した。
    6.暗期処理中およびその前後の温度の影響 暗期処理前昼夜17-17°Cに管理した場合にもつとも雌花の発現が多く,24-17°, 24-32°の順に雌花は抑制された。
    暗期処理中の温度を17°Cに保つた場合にもつとも雌花の発現が多く,これより低温でも高温でも発現は減り,32°C以上では全然発現せず,暗期の繰り返し数を12回まで増しても無効であつた。明期24°C,暗期17°Cの組み合わせが最適であつた。
    暗期処理後の温度を,昼24°C,補助光によつて照明する夜間を17°C, 24°Cおよび30°Cの3区につくり別けてみると,17°Cの場合にもつとも雌花の発現多く,温度が高くなるにつれて発現は減つた。
    7.連続照明下の温度の影響 温度の影響力も非常に強いから,暗期を与えないままで温度の調飾によつて雌花の発現を誘起することができるかどうかをみると,17°Cに4日以上保つと雌花は発現する。暗期を与えなくても温度処理だけでも雌花は発現する。また,生育初期から連続照明下で17, 24および30°Cの3つの温度下で育てると,17°C下でもつとも雌花の発現が早く,温慶が高くなるにつれて発現は遅れる。しかし,30°C下でも高節位にわずかながら雌花の発現がみられ,高温連続照明下でも生育後期になると雌花は発現する。
    8.暗期処理前の照明の強さおよび窒素施肥の影響 暗期処理前に遮光され,あるいは窒素を多量または少量施されたものは,遮光されず,中庸量の窒素を施されたものに較べて雌花の発現が少ない。暗期処理開始期の体内成分と対照して考えると,蛋白態窒素と全糖含量がともに多い場合に暗反応が充分に行なわれ,雌花の発現が多いという関係がある。
  • 品種と裂果
    二井内 清之, 本多 藤雄
    1961 年30 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    トマトの裂果を本格的に防止するには育種に頼るより方法がないので,その指針とするため抵抗性の品種間差ならびに抵抗性品種の抵抗性の分析をおこなうため,1957~59年にかけて試験をおこなつた。
    1. 26品種について検討した結果,同心円裂果と側面裂果はBonny Bestやアーリアナ群のような早生品種に多く,とくにJune Pinkにはげしくあらわれた。放射裂果はRot Köppen, San Marzana,珠玉のようなコルク層のほとんどない品種には少なかつた。同心円裂果は葉型が小さく,果実が葉蔭になりにくい品種に多く現われた。
    2. Crack-Proof,#135は果皮の強度が強く,果実の糖度が低く,そのたあに放射裂果に対して抵抗性を持つものと考えられた。
    3. Crack-PrGof, 63A311は葉が果房を被うように附着するので,このために同心円裂果,側面裂果がきわめて少なかつた。
    4.育種の目標としては単に果皮の強度,果実の低糖度だけを考えては十分な効果を期待できない。むしろコルク層が小さく,葉が果房を被覆するように附着するような型にもつていくべきとおもわれる。
  • 花岡 保
    1961 年30 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1958, 1959の両年,札幌黄の雄性不稔株を栄養繁殖したものならびに米国から導入した雄性不稔の系統に他品種または同一晶種内の異なつた系統を交配し,F1の実用形質を両親と比較した。
    1. F1の草勢は幼少から旺盛で,生育全期を通じて強勢の傾向が認められ,ひいては球重に大きく影響する。
    2. F1では葉数はわずかの組み合わせで増加を示し,抽苔株の出現したもの,成熟期に倒伏しない草型の傾向を示したものなど認められた。
    3. F1の葉色,球色などは試験の範囲内では両親のほぼ中間を示した。
    4.熟期は倒伏で比較したが,両親の中間が多く,両親の平均より早いものが多かつた。
    5.球形は球形指数で比較したが,F1は両親の中間が多く,F1の整一性は1958年は低いようにみえたが1959年は高く,よく揃つた。中でも札幌黄を母親にした組み合わせは玉揃い演優れていた。
    6.熟期の早晩と球形指数は類似品種の中では相関が認められるが,形質の異なつた品種では一概に云えない。
    7. F1の球重は両親より重くなるが,組み合わせにより差異があり,時には両親より低いこともみられる。
    8. F1の貯蔵性はおおよそ組み合わせの半ばが両親の中間で他は両親より高い傾向がみられる。
    9.札幌黄を母とした場合の父親としてはDowning Yellow Globe, Brigham Yellow Globeなどが優れ,札幌黄を母としたF1は米国より導入の1代雑種や「米国より導入の不稔系統×札幌黄」より更に優良であつた。
    10.導入の不稔系に他品種を集団交配する場合,札幌黄を父親にすれば玉揃いはよくなる。「Brigham Yellow Globe×札幌黄」は実用形質が優良で有望組み合わせの一つと思われる。
    11.札幌黄の在来系統間F1も球重増加の傾向にあり今後吟味の要があろう。
  • 早瀬 広司
    1961 年30 巻1 号 p. 24-28
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    The author investigated the interaction effect of temperature and humidity on trends of germination power of cucumber pollen after dehiscence. Pollen vitality decreases with increasing temperature in these experiments. Low humidity hastens the rapidity of losing germination power in all temperatures used. The harmful effect of saturated humidity on pollen vitality is greater at high temperature than at low temperature. The favorable humidity for longevity is 80% which is usual during summer in Sapporo. Rate of pollen germination in male flowers at 10°C. and 80% humidity was maintained high (over 50%) for a considerably long period (till 8 p. m. of the fourth day after flowering). Pollen vitality was increased by alternation from low to high humidity, while it was decreased by the reverse alternation from high to low humidity. A parallel relation was ascertained between results of pollination and germination tests on artificial media. Trends of germination power varied according to the starting time of treatment to low temperature.
  • 養分吸収過程について
    増井 正夫, 福島 与平, 久保島 正威, 板垣 光彦, 林 昌徳
    1961 年30 巻1 号 p. 29-38
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.メロンの養分吸収過程を知る目的で,Earl's Favourite系品種を前報と同様に木箱栽培して時期別にsamplingをおこない,植物体の生育,果実の発育,糖度の変化ならびに植物体の各部位および全植物体の5要素吸収過程を調査した。
    2.草丈の伸長は定植後5週間位までは旺盛であるが,その後は果実収穫時まで伸長の増加はみられなかつた。果重はネットの現われ始めた授粉後2~3週間目頃の増加がいちじるしかつたが,果実の糖度は果実収穫前2週間の増加がいちじるしかつた。
    3.全植物体の窒素吸収量は定植後9週間目頃までは増加の傾向を示したが,その後は果実収穫時まで増加はみられなかつた。葉の窒素吸収量についてみると,定植後5週間目頃までは急激に増加し,その後の増加は9週間目頃まで緩慢となり,以後減少した。茎の窒素吸収量は葉に比して少なかつたが,その吸収過程は葉とほぼ同様な傾向がみられた。それに反し,果実の窒素吸収は全生育期間を通じて直線的な傾向をもつて増加した。これらの結果より葉および茎に吸収された窒素の一部は果実収穫2週間目頃になると果実に移行することがわかつた。
    4.全植物体の燐酸吸収量は果実収穫時まで増加の傾向を示した。標準区および窒素Low level区の葉の燐酸吸収量についてみると,標準区では定植後3~5週間目頃の増加がいちじるしく,その後果実収穫時まで増加は緩慢であつたが,窒素Low level区では定植後3~7週間目頃の増加は緩慢であり,その後果実収穫時までほとんど増加はみられなかつた。一方果実の燐酸吸収は全生育期間を通じて直線的に増加した。
    5.全植物体の加里吸収量は定植後3~9過間目の間は直線的な傾向をもつて増加したが,その後の増加は果実収穫時までやや緩慢となつた。葉および茎の加里吸収量についてみると,定植後9週間目頃までは増加の傾向を示したが,その後は果実収穫時までほとんど増加はみられなかつた。一方果実の加里吸収は全生育期間を通じて直線的に増加した。
    6.葉の石灰吸収量は他の部位に比してきわめて多く,またその吸収過程は全生育期間を通じて直線的な傾向をもつて増加した。なお窒素の施用量が減少すると葉の石灰吸収量は増加し,またその含有率は大となつた。
    7.葉のマグネシウム吸収量は他の部位に比してきわめて多く,また標準区のそれは全生育期間を通じて他区より大であつた。葉におけるマグネシウム吸収過程についてみると,定植後9週間目頃までは増加の傾向を示したが,その後果実収穫時までの増加は緩慢であつた。なお全植物体のマグネシウム吸収量は葉のそれとほぼ同様な傾向を示した。
    8.葉,果実,金植物体の窒素吸収量を100とした場合の燐酸,加里,石灰,マグネシウムの吸収量比をみると,葉および全植物体の窒素に対する燐酸の吸収量比は全生育期間を通じて30~50の範囲内であり,生育時期による変化はみられなかつた。それに対し,加里,石灰,マグネシウムの吸収量比は,いずれも全生育期間を通じて直線的に増加した。一方果実の窒素に対する燐酸,加里,石灰,マグネシウムの吸収量比は果実のネットの現われ始めた交配後2~3週間目頃が最大であつた。
    9.硫安を用いた窒素最適施用量区であるLow level区,ナタネ粕を用いた標準区の株当たり5要素吸収量は,N, P2O5, K2O, CaO, MgO,それぞれLow level区が6.2, 2.6, 18.5, 15.5, 2.2gであり,標準区が7.6, 3.1, 20.5, 17.2, 3.5gであつた。
  • トマト品種間の生育,収量および色素含量の比較
    高橋 敏秋, 中山 昌明, 有馬 博
    1961 年30 巻1 号 p. 39-47
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    トマトの生育,収量および果実の色素含量について1958年は福寿2号,古谷早生,新豊玉2号,新星,栗原,愛知トマト,ポンデローザ,松戸ポンデローザ,清州2号,三岡,栄,信濃,桔梗育1号,ひかり,ジュビリー,東北4号の16品種,1959年は珠玉,新福寿,福寿1号,福寿2号,大型福寿,世界一,赤福1号,赤福3号,大型赤福,桔梗育1号,結梗育2号,ジュビリーの12品種を使用して測定を行ない,各品種の比較調査をした。実験は信州大学農学部農場で行なつた。
    1.草丈の伸長量の大きいのは松戸ポンデローザ,大型赤福,福寿1号で,伸長量の小さいのは東北4号,ジュビリー,珠玉であつた。各品種の葉数の増加は伸長量の大小とは一致しなかつた。
    2.開花数は各品種を通じて花房節位の上がるほど多くなるが,反対に着果数は滅少し,したがつて着果率は花房上位のものほど減少する傾向があつた。開花数の多い品種は珠玉,ポンデローザ,愛知トマトであつた。珠玉は着果数がもつとも多く,3花房合計の着果率は97.5%であつた。
    3.各品種別の収量は収穫果実数によつて左右されるが,また果実1個当たりの重量にも影響される。1958年では福寿2号が収量もつとも多く,1959年では大型赤福がもつとも多かつた。珠玉は収穫果実数がもつとも多かつたが,1個の重量が50g以下で,収量がもつとも少なかつた。
    4.成熟果の乾物率,粘度,pH,糖分含量,硬度,着色の状態などについて観察を行なつた。乾物率の大きいは珠玉,松戸ポンデローザなどであり,pHは各品種とも大差はなくて3.85~4.35の間にあつた。糖分含量は赤福3号,世界一,松戸ポンデローザ,清州2号などが多く,ジュビリー,東北4号などが少なかつた。
    5.果実の色素含量についてリコピンは1958年では桔梗育1号,清州2号,古谷早生などが多く,1959年では大型福寿,大型赤福などが多かつたが,1959年は1958年に比べて一般に多い傾向にあつた。カロチンおよびキサントフィルは両年とも品種間に大差はなかつた。
  • 葉菜類について
    大沢 孝也
    1961 年30 巻1 号 p. 48-56
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本報は1957~1960年にわたつておこなつた主要蔬菜の耐塩性に関する一連の砂耕試験のうち,葉菜7種類,すなわちカンラン,ホウレンソウ,ハクサイ,セルリー,タマネギ,レタス,ミツバに関して得た結果をまとめたものである。実験方法は第1報で述べたと同様であつて,上記葉菜につき各1品種を供試してガラス室内で砂耕栽培し,HOAGLAND氏液を基本培養液(標準区)として,これにNaClを1000, 2000, 4000, 8000, 16000ppmの各濃度に加えたNaCl処理区を設けた。
    1.処理濃度が高くなるにつれてホウレンソウ,タマネギ,レタス,ミツバでは生育が阻害されて植物体は矮化し,生葉数,収量が減じたが,カンラン,ハクサイセルリーでは比較的低濃度区では生育に悪影響がなく,1000ないし2000ppm区ではかえつて生育,収量が標準区をしのぐ場合があつた。なおハクサイ レタスは16000ppm区,ミツバは4000ppm区以上で全株が枯死した。地上部新鮮重の半減をきたす大約の処理濃度は,高い方から順に,カンラン9000,ホウレンソウ8000,ハクサイ8000,セルリー6000,タマネギ2500,レタス2000,ミツバ1000ppmであつた。
    カンランの結球開始は高濃度区ほどやや遅れ,とくに8000, 16000ppm両区は結球不完全で,結球部収量(新鮮重)の半減濃度は約6500ppmであつた。タマネギの球部の肥大開始および葉部の倒伏の時期は,いちじるしく生育不良の16000ppm区を除いて他の区間では差がなく,結球部収量(新鮮重)の半減濃度は約2500ppmであつた。
    地上部の乾物率は高濃度区でやや高くなるものがあつた。
    2.塩害の特殊症状は次のようであつた。カンランは処理開始後一時的に,2000ppm区以上で処理濃度に比例して葉の表面がwaxyとなつた。ホウレンソウは,16000ppm区がいちじるしく生育不良で全体的にひどく黄化した。ハクサイは8000ppm区以上で葉が濃青緑色を呈し,16000ppm区は全株が枯死した。またNaCl区全般において葉縁が表側に巻き込む症状が見られた。タマネギはNaCl区全般において,処理濃度に比例して外葉の先端から枯れ込み,とくに16000ppm区の葉部は完全に枯れ込んだ。レタスは4000, 8000ppm両区は濃緑色を呈したが,16000ppm区は全体的に黄化して全株が枯死した。セルリー,ミツバは何らの特殊症状も現わさなかつたが,後者は4000ppm区以上で全株が枯死した。
    3.処理濃度の増大にともなつて,葉中のNaおよびClの集積はほとんどの疏菜でほぼ直線的に増加したが,耐塩性の強い蔬菜は弱い蔬菜よりもNa集積が大きい傾向があつた。ミツバ以外ではNaの集積はClとほぼ同等かあるいはより大であつた。葉中のK, Ca, Mg含量は一般にNaと拮抗的に減少したが,拮抗の様相はionや蔬菜の種類によつてまちまちであり,またこれら4種cationの総量は多くの蔬菜では漸増した。葉中N含量は,カンラン以外ではNaCl区で減少する傾向があり,とくにホウレンソウでは高濃度区でいちじるしく減少した。葉中P含量は蔬菜によつて増減の傾向が異なる。しかしN, Pの含量変化はcationにおけるほどいちじるしくない。炭水化物含量も蔬菜によつて変化の傾向を異にした。
  • 種子低温処理がカンランの抽苔開花に及ぼす影響
    中村 英司
    1961 年30 巻1 号 p. 57-62
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.1959~60年にかけて,カンランの品種「葉深」を用い,その生育初期における低温感応性について検討した。
    2.葉深の催芽種子に播種前1±1°Cで20日間の種子低温処理を加えたものを,3月14日,3月24日,4月3日,4月13日および10月2日に,対照区とともに播種した。
    このうち,3月14日播きのものでは,処理区(V 20)は全株抽台開花して健全種子を登熟させた。対照区(VO)では1個体が開花したが種子は得られなかつた。
    3月24日および4月3日播きのものでは,処理区,対照区とも抽台せずに結球したが,花芽分化の速度の程度は処理区の方がまさつていた。また春播きの最後の播種期である4月13日区では処理区も対照区も全く花芽分化をおこさずに結球した。
    10月2日播きでは,花芽分化,抽台開花の点については両区の間に差はみとめられず,いずれも開花結実した。
    3.カンランはある苗令に達した後において外界の低温に感応しやすくなり,その好適な温度によつて春化(Vernalization)をうけ抽台開花するのであるが,本実験によつて葉深のようなカンラン品種は,その発芽直後の時期においても,ある程度の低温感応性を持つていることが明らかになつた。
    ただし発芽直後に低温に感応する能力はかなり弱いものであつて,これのみではカンランの発育を強く押し進めることはできない。しかし,不十分なPlant Vernalizationをうけたカンランを,Seed Vernalizationによつて附加的に補ない,その発育を完了させることはできるのである。
  • 樹の発育ならびに果実に及ぽす中間台の影響
    岩崎 藤助, 西浦 昌男, 七条 寅之助, 奥代 直巳
    1961 年30 巻1 号 p. 63-72
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    温州3系統・ユズおよびタチバナを中間台にしたカラタチ台の温州について,第1報以後10か年間の,樹の発育および果実におよぼす中間台の影響について調査した。
    1.樹勢の弱いカラタチ台温州系統を中間台として,強い系統に接ぎかえても,強い系統を中間台としたものほどには,樹勢は旺勢にならず,収量も少なく,台部の生育も不良であつた。それらの違いは樹令が進むにつれてますます顕著になった。
    2.異系統に接ぎかえろと,同一系統を接いだ場合よりも,樹や台の発育を悪くし,収量も減る傾向があつた。
    3.カラタチ台のタチバナを中間台としで温州を接いだものは,比較的よく生長し,収量も多かつたが,ユズを中間台にしたものは,穂部・台部とも生育がもつとも悪く,収量も少なかつた。そして,それらの違いも樹令がたつにつれてますます顕著になつた。
    4.ユズ中間台の果実が小さかつたほかは,いずれも果実の大きさ・着色の早晩ならびに品質には,大差が認められなかつた。
    5.穂部と中間台部との接着部では,温州3系統はいずれも両部が円滑に肥大したが,タチバナは穂部の下端が急に肥大し,ユズは穂部が急に細くなつた。
    6.野田温州は台部と中間台部との木質部の接着部に,ひび割れ状の線があり,材が乾燥するにつれて,この部分がかなり奥深くまで裂けた。他の4種では異状がなかつた。
    7.タチバナ区の全部とユズ区の一部の中間台部に,stem-pittingを認めたが,樹勢の強弱には直接の関係が認められなかつた。
  • 中村 怜之輔
    1961 年30 巻1 号 p. 73-76
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.渋ガキ果実の脱渋に対する凍結貯蔵の影響の有無をみるために,京大付属農場から採取した13品種の果実について,-12°Cおよび-25°Cの凍結貯蔵を10~90日間続け,その間における可溶性タンニン含量の変化を観察した。
    2.その結果,凍結後すぐには脱渋しないが,貯蔵日数の経つに従つて可溶性タンニンが漸減し,一定期間後には確実に脱渋した。その場合の品種による脱渋の難易は,炭酸ガス法による脱渋の難易とよく一致した。
    3.凍結貯蔵温度が-20~-30°Cまでは低いほど脱渋が速やかにおこるが,それ以下の極低温になるとかえつて脱渋が遅くなる傾向がみられた。
    4.脱渋の機構につき2, 3考察を試みたが,その結果従来の脱渋機構とは性質を異にするようである。すなわち,凍結によりタンニン物質そのものは変化しないがそれを包含する膠質物質の不可逆的変性,特に脱水変性に密接に関係するものと思われる。
  • ブドウ樹の地下部および地上部の伸長について
    広保 正
    1961 年30 巻1 号 p. 77-81
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    Observations on the growth cycles of roots, shoots, and berries of grapes were undertook at the vineyard of Kotobukiya Institute of Viticulture near Kofu city from 1955 to 1957. Materials used were nonbearing and bearing vines of Black Queen variety.
    1. Root growth started in the latter part of April and reached its height in new root formation and elongation in the middle and latter parts of July. It had another peak in the latter part of October, and was observed to be rather restricted between the two peaks. Its growth was ceased from the early part of December through the middle of April in the following year.
    2. Shoot growth started in middle April with emergence of buds, and was the most vigorous from early June through middle July. Its growth was ceased in middle September.
    3. Berry growth was the most conspicuous from late July through early August.
    4. Growth cycle of the grapevine as a whole was shown to be made of the following sequence (Figs. 1, 2 and 3) at first shoots started to grow, root growth followed, then berries made a rapid growth. After the berries matured, the second peak of root growth occurred, then the vine lost its leaves and became dormant.
  • 根および塊根の解剖学的観察
    青葉 高, 渡部 俊三, 相馬 和彦
    1961 年30 巻1 号 p. 82-88
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    ダリアの根および塊根について解剖的観察をおこないつぎのような結果を得た。
    1.ダリアの初生根は4原型の中心柱を有し,髄部のしめる部分はきわめて小さい。したがつて発育肥大が旺盛でなく,塊根化することはない。これは側根でも同様である。
    2.実生苗では本葉2節展開期頃に子葉の基部に,最初2本の不定根を大体規則的に形成する。その後子葉節あるいは子葉節に近い節部(俗にクラウンとよばれる)から多数の不定根を生じ,その多くは肥大して塊根となる。
    3.これらの不定根は中心柱の髄が初生根に比較してかなり広い部位をしめ,木部,篩部は髄の周囲に10~~25くらい放射状に配列され,いわゆる多原型維管束で初生根とは形態を異にしている。
    不定根の肥大は形成層および木部導管附近の細胞の分裂と増大による木部肥大型をとる。
    4.不定根の肥大の程度と2次木部導管環数および髄部の大きさ(すなわち形成層の活性度と細胞増大の程度)との間には密接な関係が見られたが,1次木部数と不定根直径との間には相関が認められなかつた。
    本研究のとりまとめにあたつては,塚本教授の御懇篤な御指導をいただいた。ここに厚く御礼を申し上げる。
  • 木子に対する肥料処理が開花ならびにBlind発生に及ぼす影響
    小杉 清, 近藤 勝
    1961 年30 巻1 号 p. 89-92
    発行日: 1961/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.Spotlightの木子(直径6~9mm)を用いて肥料処理を行ない,開花およびBlindの発生状況を調べた。
    2.肥料処理は1N=50ppm, 1P=25ppm, 1K=40ppmとして,1N, 2N, 4N, 1P, 2P, 1K, 2Kを組み合わせた3要素区に無肥料区を加えて13区とした。
    3.平均開花日は,概してNの濃度が高いほどおくれた。総体的に2P2Kの開花が早かつた。
    4.開花率は最高61.1% (4N2P2K),最低0%(無肥料区)で,施肥区の最低は11.8% (4NlPlK),平均37.7%であつた。
    5. Blindは4N2PlKに11.8%,未開花は4NlPlKと4N2PlKに5.9%ずつ生じただけで,開花しないものの大部分は,花芽分化が行なわれなかつた。
    6.無肥料区の葉数が特に少なかつた以外は,葉数と小花数については各区間の差異は明らかでなかつた。
    7.草丈,地上部生体重,球茎重ともに概して2Nが最高で,1Nと4Nは劣つた。
    8.根重と木子数はNの濃度が高かまるにしたがつて減少したが,木子生体垂は1Pの場合には,木子数と同様の傾向を示したが, 2Pの場合には2Nが最低であつた。
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