園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
土壌湿度がブドウの生長ならびに養分吸収に及ぼす影響
小林 章榑谷 勝大東 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1963 年 32 巻 2 号 p. 77-84

詳細
抄録

1. 鉢植えのブドウ(品種デラウェア)について, 土壌湿度の高低と樹体の生長ならびに養分吸収との関係を調査した。その結果, 最大容水量の83~35%の範囲内では, 土壌湿度の低い区ほど, 葉の同化量, 新梢の伸長, 樹体全重, 開花速度, 結実歩合, および果粒の肥大は劣つた。
2. 梅雨明け後に気温が高くなると, 新梢の基部葉が変色し早期に落葉した。被害の最も少ないのは, 土壌湿度の最低区であつた。しかし, この区を除けば, 一般に土壌湿度の低い区ほど落葉が多く, とくに生長前期に高湿度で7月上旬以後に最低湿度に変えた区(高-最低区)では被害がひどかつた。
3. 5要素 (N, P, K, Ca, Mg) についての葉分析成績では, 土壌湿度の低下により最も影響を受けたのはMg の吸収であり, 土壌湿度の低い区ほど葉内のMg含量は少なかつた。殊に, 着果樹における土壌湿度の最低区および高-最低区では, いずれもMgの飢餓状態を呈した。しかるに, 落葉が土壌湿度の最低区で最も少なく, 高-最低区で最も多かつたのは, 落葉が単に土壌湿度の低下によるMg欠乏によるだけでなく, 体内水分の急変により, 一層助長されたものと思われる。
4. 果粒肥大の日変化をみると, 果粒は昼間に収縮し夜間に膨大し, その較差は土壌湿度の低い区ほど大であつた。

著者関連情報
© 園芸学会
次の記事
feedback
Top