園芸学会雑誌
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ヒヤシンスの生育経過とこれに伴なう成分含量の消長について
筒井 澄西井 謙治
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1964 年 33 巻 1 号 p. 81-92

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抄録

1. ヒヤシンス (品種 Queen of the Blues) の13cm球を圃場で標準栽培し, その生育経過と, 生育に伴なう植物体各部の主要無機成分ならびに炭水化物含量の消長を調査した。
2. ヒヤシンスは, 通常活動する生長点が一つしかなく, 生長点の交代は6月中旬の掘り上げ直後に始まる花芽分化の初期に起る。新生長点は, ただちに葉分化を開始し, 翌年の掘上げ直前までかかって2~3枚のりん葉と数枚の同化葉の分化を完了する。
3. 葉の長さや重量は, 5月中旬に最大となり, 以後重量は漸減する。含水率は萠芽直後にやや高まる以外は生育期間を通じてほとんど変化しない。球周は, 花穂が抽出して開花の始まる4月中旬にやや縮むが, 以後収穫まで休みなく増大する。
4. 母りん片の重量は, 植付期から徐々に, 萌芽期から開花期にかけて急に減少し, 含水率はやや高くなる。れ以後, 収穫期まで, 重量は増加し, 含水率は低下を続ける。
5. 新りん葉および同化葉基部が肥厚してりん片化し, 重量が増加し始めるのは, 5月初めからで, 収穫まで休みなく増加し続け, これに伴なつて含水率は低下する。
6. 茎葉の窒素量は, 4月下旬まで急に増加し, 5月中旬まであまり変化せず, 以後収穫まで急速に減少する。母りん片の窒素量は, 植付け後やや減少するが, 以後4月下旬までほとんど変化せず, 5月上旬より収穫まで増加し続ける。新りん片の窒素量増加の経過も, 母りん片とほとんど同様であった。
7. りん酸含量の変化は, 各植物体部位とも窒素のそれとほとんど同様である。マグネシウム含量も, これとほぼ同様であつた。
8. 加里含有率は, 新りん片で4月中旬に急激な低下をみせたのを除けば, 各部位ともほとんど変化せず, 生育期間を通じておよそ一定の値を保つた。したがつて, 絶対量の変化は, ほぼ乾物重量の変化と一致した。
9. カルシウム含量は, 茎葉, 新りん片では, ほとんど全期間を通じて増加し続けた点で, 他の要素と異なり, また母りん片では, 5月中旬に含量が増加した以外, ほとんど目立つた変化をみせなかつた。
10. 球根の貯蔵炭水化物の大半は非還元糖とその約半量のでん粉である。母りん片の非還元糖量は, 植付けより4月中旬にかけて大きく減少し, でん粉は消失するが, これ以後収穫まで再蓄積される。新りん片では, これよりややおくれ5月上旬から蓄積が始まる。一般に新りん片の方が, 母りん片より炭水化物含有率が高い。
11. 生育経過と成分含有量の消長から, ヒヤシンスの生育期は次の6段階に区分された。
(1) 根系発達期 植付け→融雪
(2) 茎葉生育期 融雪→4月中旬
(3) 茎葉完成期 4月中旬→5月上旬
(4) 球根肥大前期 5月上旬→5月中旬
(5) 球根肥大後期 5月中旬→6月上旬
(6) 成熟期 6月上旬→収穫

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