園芸学会雑誌
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アマリリス球根のりん片繁殖に関する研究
藤岡 作太郎
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1964 年 33 巻 2 号 p. 159-170

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抄録

高温性植物であるアマリリスのりん片繁殖は, 自然の高温期を利用した場合, 小球形成後, すぐに秋の冷凉期にはいるために肥大が伴なわず, 腐敗が多くなる。本実験ではいつたん休眠させた母球を材料にして冬季の加温床中にりん片を挿し, 外温の高まつたころに仮植して幼苗の生育期を延長する方法を採用した。その際りん片繁殖における切片の腐敗防止と小球形成を促進さすために床挿し前に切片のキユアリング処理を行ない, その効果をみるとともに品種間の挿床適温の差異とキユアリング後における生長調節物質の利用について検討した。
1. 切片のキユアリングは湿度90~92%のもとで, 温度25~30°Cがよく, 35°C前後の高温では腐敗が多かつた。小球形成の適温は25°Cであり, 発根は30°Cの処理期間が長くなるほど多くなつた。
2. 小球形成, 肥大増進, 腐敗防止のため, 切片のキユアリングは4日間処理が最もよく, 他作物の場合とほぼ一致した。2月挿しは8月挿しに比較して繁殖率は劣つたが, 4日間キユアリング処理を行なうと8月挿しに近い高い繁殖率がえられた。
3. 適温を異にする小球形成と発根に対して, 変温処理は30°Cと25°Cの12時間交互区が最もよく, 24あるいは8時間変温区では劣り, それ以上の温度較差で変温してもよくなかつた。変温区は各恒温区よりも小球形成日数が10日間, キユアリングしない直挿し区よりも20日以上も早くなつた。発根に対しては30°Cと25°Cの12時間区が70日後100%に達し, 30°Cと25°Cの24時間変温区が70%でこれについだ。腐敗防止に対しても変温区は恒温区や直挿し区よりもすぐれていた。
4. ルードウィッヒ系アマリリスはりん片繁殖した場合, (1) 小球形成とその発育が順調に進む品種群と, (2) 小球形成がおそく, しかも小球はかなり肥大するにもかかわらず, 萠芽の著しく遅れる品種群に大別できる。冬季のりん片挿しは, 夏季と違つて母球の外部切片の小球形成が悪かつた。しかしこの傾向は品種によつて差異があつた。
6. キユアリングを行なわないで, 母球切断後に切片をルートンで塗布処理して床挿しすると切片全体にわたり腐敗したが, 3~5日のキユアリング後に処理すると腐敗率は低くなつた。とくに5日間キユアリング後のルートン処理は小球形成および発根率に対して顕著な効果があり, 両者は1か月後には90%以上に達した。

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