抄録
1963年に青森県下で4地区8か所, 北海道で3地区7か所のリンゴ園につき, 粗皮病発生園と未発生園における土壌の物理的, 化学的諸性質を調べるとともに, 葉および枝梢中の無機成分を比較分析した。
1. 土壌のpHの低いところ, および排水不良などによつて土壌の還元化が促進しているようなところに粗皮病の発生が多かつた。
2. 粗皮病発生園では未発生園にくらべて, 表土中のマンガンの含有量がきわめて多く, 第1, 2層における置換性(水溶性を含む)および易還元性マンガンはそれぞれ15.9, 9.9および266, 139ppmであつた。その中, 特に易還元性マンガンの含量と粗皮病の発生度との間に深い関係があつた。
3. 葉および枝梢中の無機成分を同一品種のり病樹と健全樹との間で比較すると, リン酸, 加里, カルシウム, マグネシウムおよび鉄については差がなかつたが, マンガンについてはり病樹の含量が健全樹の含量よりもはるかに多かつた。とくに, 本症激発園と未発生園における台木を同じくする各品種の葉および枝梢中のマンガン含有量を比較すると, 同一組合せでは, 激発園は未発生園の約3~4倍の多きに達していた。ただし異なつた品種間では, マンガン吸収量と粗皮病の発生との間には一定の傾向を認めなかつた。