抄録
長野産および山形産のバートレットの冷蔵中および室温あるいは20°Cで追熟中の果皮の色, 硬度, 果汁の成分, 呼吸量の変化について調査を行なつた。その成績の主な点は次のとおりである。
1. 無冷蔵で20°Cで追熟したものは, 順調, かつせいいつに成熟し, 熟果の品質もよかつた。呼吸量はしだいに増加し, 適熟期はその頂点とほぼ一致した。無冷蔵室温追熟区は採収時期の早かつた長野産の果実では果肉の軟化はおくれ, かつ熟度は不せいいつで, 腐敗果の発生が多かつた。呼吸量の上昇は20°C区よりおくれ, その頂点も低かつた。熟度の進んでいた山形産ではその差は顕著ではなかつた。
2. 冷蔵中には果皮の黄化や硬度の低下はわずかながら進行し, 呼吸量も長野産果実の3週間冷蔵中に増加を示した。
3. 冷蔵後室温あるいは20°Cに移すと, 果皮の黄化や果肉の軟化はすみやかに進み, 呼吸量も急増して, その頂点のころに適熟期に達した。冷蔵期間の長い場合には, 室温区と20°C区との間に適熟に達するまでの早さに差がないか, あるいは室温区の方がやや早かつた。
4. 呼吸量と果実の軟化との間には密接な関係が認められた。
5. 室温で成熟が遅延したり, 熟度が不せいいつになつたりするのは, 追熟の適温である20°Cよりも高いため, 成熟を促進する要因の作られるのが抑制されるためと考えられる。冷蔵中にはこの要因が徐々に作られ, 作られた後は室温でもよく成熟するのであろう。この要因は既往の研究成績からエチレンであろうと推定した。