園芸学会雑誌
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果樹の亜硫酸ガスによる煙害 (第5報)
カンキツ類の亜硫酸ガスの吸収と落葉ならびに体内成分との関係
松島 二良原田 学
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1966 年 35 巻 3 号 p. 242-246

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抄録

温州ミカン, ハッサク, ナツダイダイを連続通気方法によつてSO2くん蒸を行ない, SO2の吸収量すなわち葉内S含量の増加と落葉率ならびに他の葉内成分含量におよぼす影響を調査した。
1. 冬季毎日2時間あて34日間, 5, 1, 0ppmの濃度のSO2でくん蒸した結果, 煙斑の発生は認められなかつたが, 落葉率はいずれの種類も処理によつて有意的に増大したが, 濃度間では有意差はみられなかつた。一方葉内S含量は各種類ともSO2濃度の増加とともに増大し, 落葉率と関係があることを示した。SO2濃度とK含量との関係は, 0, 1ppm両区では明らかな関係はなく, 5ppm区では両区に比べ減少の度合がわずかであつた。また5ppm区ではいずれの種類もCaの減少の度が大であつた。N, P, Mgは処理に影響されなかつた。
2. 生育期間中のくん蒸の結果でも葉内S含量の増加と落葉率とは平行的な関係が認められたが, S含量の増加は冬季より大であり, またくん蒸期間が長いほど顕著であつた。冬季の実験に比べCa含量に対する影響は明らかでなかつたが, Kは処理区が常に高かつた。
3. SO2の吸収量はハッサク, ナツダイダイは温州より大きかつたが, 落葉率は温州が最も大であつた。
4. 120ppm-hour の同一積算量において濃度と時間を組合わせた場合, 高濃度短時間処理のほうが低濃度長時間処理より著しく被害が大であつたが, S含量はくん蒸区の間に大差はなかつた。

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