園芸学会雑誌
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タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第11報)
球の汁液中の物理的要因について
加藤 徹
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1967 年 36 巻 1 号 p. 109-113

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抄録
タマネギ球の汁液の発芽および苗の生育を抑制する要因のうちの物理的な面について研究がすすめられた。
物理的要因のうち, pHはあまり関係ないことがすでに報告してあるので, 汁液の滲透圧について検討した。
1. タマネギ汁液のエーテル不溶部は種子の発芽をひじように顕著に抑制した。
2. エーテル不溶部の滲透圧は14.8気圧あつたのでNaClあるいはKNO3溶液をいろいろの濃度に作りわけ, 種子の発芽あるいは苗の生長に及ぼす影響を調査してみると, 15気圧前後から濃度が高まるにつれて種子発芽も苗の生長も顕著に抑制される傾向がみとめられた。NaCl溶液にエーテル抽出物を加えたもの, あるいはタマネギ汁液はNaClのみのものより種子の発芽抑制力は強いことがみとめられた。
3. 球の肥大貯蔵に伴うタマネギ汁液の検糖計示度および, 種子発芽抑制力をみると, 球の肥大初期は著しく検糖計示度が高く, 種子発芽抑制力もひじように強いが, その後次第に糖度も低下し, 発芽抑制力も減退している。
4. 遅萠芽性の奥州種は早萠芽性の泉州黄にくらべ, 糖度高く, 汁液の種子発芽抑制力も強い。
5. いろいろの濃度の還元糖あるいは蔗糖の溶液を作りこれに球の底盤部あるいは粗酵素液を加えて, タマネギ球の呼吸代謝に及ぼす基質の濃度の影響を Warburg 検圧計を用いて調査したところ, タマネギ汁液と同等の滲透圧を有する糖基質で呼吸代謝が抑制されていた。
6. 以上の結果からタマネギ球の休眠は球の肥大に伴う糖分の蓄積が糖濃度を高め, さらに呼吸代謝を抑制した結果誘発さるれもので, 呼吸代謝の活発化とともに休眠から覚醒萠芽へと漸進的に進行して行くものであることが結論された。なお Allylsulfide 系物質の増加はこの休眠期間をいつそう長びかせるものと考えられた。
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