園芸学会雑誌
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自家不和合性ペチュニアにおける反復授粉による偽稔性の誘起
樋口 春三
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1968 年 37 巻 4 号 p. 349-356

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抄録
自家不和合性の生理学的機構を明らかにし, あわせて自家不和合性の人為的消去法を見い出そうとして実験をおこなつた。
材料は配偶体反応型に属する Petunia hybrida の W166K(S1S2), W 166H(S2S3), K 146BH(S6S6) 系統を用いた。
(1) 供試した3系統はいずれも開花時における自殖稔性は全くなく, 系統間交配では 100% の稔性を示した。すなわち完全な自家不和合性が確認された。
(2) 和合授粉 (系統間交配) における花粉管は授粉後約36時間で子房部に到達し, 不和合授粉 (自家授粉)ではいずれも花柱部において生長を停止した。生長停止した花粉管先端の位置は花柱の全長に対し, W 166K 67%, W 166H 56%, K 146BH 17%であつた。
(3) 3系統とも蕾授粉による偽稔性が認められた。すなわち, 開花6日前に自家受精力が生じ, 5日前に最高に達し, 3日前には完全に消失した。偽稔性の程度はW 166K が最も高く, W 166H がこれに次ぎ, K 146BHが最も低かつた。
(4) 蕾授粉による偽稔性が完全に消失した開花3日前から24時間間隔でくりかえし自家授粉をおこなつた。その結果, W 166K および W 166H の2系統は偽稔性が誘起された。その稔実率および種子形成数は授粉回数が多くなるにつれて増加した。このように不和合授粉のくりかえしによつて偽稔性を誘起する方法を反復授粉法 (repeated pollination) と名づけた。
(5) 不和合と和合授粉の組み合わせ試験の結果めから1回めの授粉によつて一旦生長停止した花粉管が2回以後の授粉の刺激によつて生長を再開したのではなく, 2回め以後の授粉によつて花粉誘導組織へ侵入した花粉管がより長く生長し, 受精あるいは種子形成に寄与したものと推定した。
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