園芸学会雑誌
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異常落葉園土壌による温州ミカン異常落葉の再現と石灰の効果
神吉 久遠矢島 邦康
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1970 年 39 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

いわゆる温州ミカンの異常落葉の原因と対策を明らかにするため, 異常落葉園の土壌を用いてはち試験を行ないつぎのような結果を得た。
1. 植物体のマンガンは細根に著しい集積が見られる。しかし, マンガン含量が6,500ppm をこえても細根の腐敗は全く認められなかつた。
2. 細根のマンガン含量と土壌の水溶性マンガン含量との間に相関が認められる。
3. 葉のマンガン含量も土壌の水溶性マンガン含量と相関があり, また, 細根のマンガン含量とも相関が認められる。
4. 褐色の斑点の発現と葉のマンガン含量との間には相関が認められる。しかし, この場合落葉はきわめて少なく, マンガン含量と落葉との関連は見られなかつた。
5. 石灰の施用による土壌pHの上昇に伴つて水溶性マンガンが減少し′生長量の増加, マンガン含量の低下など顕著な効果が認められ, 石灰の多量施用の悪影響は全く見られなかつた。
6. 以上の結果から, この異常落葉は土壌の水溶性マンガンの増加に伴うマンガンの過剰吸収がおもな原因であり, 対策としては石灰類の施用による土壌pHの上昇が最も有効と考えられる。

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